本書は河出書房新社昭和55年刊行のもの。
本書をなぜ読もうと思ったのか、忘れてしまってそそくさと探し始めた、最初は辺見庸氏の本だとあたりをつけたが外れてしまい、さらに、何冊か手繰って見て、吉行淳之介の「懐かしい人たち」に記載されたのを発見した。
吉行氏の著作には、この著者が「あの作品(空の細道のこと)は、発表する気で書いたのじゃなかった。わたしが死んで、机のヒキダシを開けると、あの原稿が出てくる。そんなつもりだった」という話(生前)をしていたと書いてあり、物凄く興味を引かれたのだった。
読んでみると、「老い」について考えさせられた、老いることについて、なんの衒いもなく書かれている、まだまだ自分の考えは、中途半端なものなだと思ってしまった。
本当の老いとは、経験しないとわからない、自分がその境地にいて思い知ることだ。
ささやかながら、そういう事を知ったことはとても良かった。
本作は日本文学大賞を受賞した作品であり、作品として読んでも損は無い(と思う)。