コロナで露わとなるJR体制=民営化の破綻と新たな攻撃に立ち向かおう

●JR北海道の破綻
 ご存じのように、JR北海道は、コロナ以前から経営危機に陥っていましたが、国土交通省は昨年12月、2023年度までの3年間に1302億円の国家財政を投入することを決定しました。年平均で400億円となる大規模な資金投入は、異例です。また、青函トンネルの維持費・補修費をJRから切り離し、鉄道運輸機構が保証するなど、事実上の「再国有化」とも言えます。
 さらに国交省によれば、2019年度のJR北海道の新卒採用者は265人だったのに対し、同年度に自己都合で退職した社員数は165人。うち96%に当たる158人が、10~30代の青年でした。これは国会でも大問題となり、赤羽一嘉国交大臣は「JR北海道は財政破綻した北海道夕張市より給与水準が低い」ことが青年の大量離職の原因だと認めざるを得ませんでした。
 しかし、政府や財界は「再国有化」して鉄道を維持しようとしているのではありません。この2年で夕張線、札沼線、日高線の廃線が強行され、留萌線も廃線が進められようとしています。すでに無人化された駅の大幅廃止など、「再国有化」のもとで鉄道と地域の切り捨てが始まっています。労働組合つぶしを目的とした国鉄分割・民営化が、今、音をたてて大破綻を開始しているのです。
 JR北海道だけではありません。コロナ禍で全JRで破綻が始まっています。JR東日本も2020年度連結決算で5960億円の経常赤字を見込み、すでに「1500億円のコストカット(単体で1100億円、グループで400億円)」を打ち出しました。巨額の利益をため込んできたJR東日本ですが、コロナ禍を理由に、赤字路線の廃線化などの合理化、外注化に踏み出そうとしています。そこには公共交通を担っているという責任の欠片もなく、一切は利益のためです。

●JR東日本の昇給制削減の意味するもの
 今春闘でJR各社はコロナ赤字を口実にベアゼロに踏み込みましたが、東日本だけはベアゼロに加えて定期昇給削減(昇給係数を4から2に)を実施しました。国鉄の歴史の中でもこのようなことは一度もありません。JRの中で最大の利益を上げてきた東日本が、1年間赤字だったからと言って定期昇給まで止めたのです。景気の良いときは働くことをあおって搾り取る、景気の悪い時は一切を労働者の犠牲転嫁で自分だけ利益を得ようとするのが経営者=資本家の本心です。これは、新たな攻撃のはじまりです。
 経団連は、「21年版経営労働政策特別委員会報告」で「昇給制度も検討すべき」と打ち出しましたが、JR東日本は、この経団連の方針をそのまま実施したものと見なければなりません。この攻撃を全産業、全労働者に直ちに波及させるということです。

●JR四国の破綻
 JR四国のかかえる危機も深刻です。
 5月8日、JR四国は2019年度の連結決算で営業利益が120億円の赤字になったと発表しました。無人駅のトイレ48カ所の閉鎖を始めました。JR西日本よる吸収、第三セクター化という案も出ていますが、JRも自治体も財政危機の中でそんな余裕はありません。
 現場には「職場は定年退職後の再雇用組と高校を出たての若い衆だけ」で、技術継承ができません。人員不足・劣悪な労働環境、技術継承の断絶という負の連鎖が起きています。「こうなるのは10年前からわかっていたこと。人事の責任」という怒りがあります。

●矛盾が集中するJR貨物
  一方で、JR貨物は、菅政権が「脱炭素化社会」を掲げていることに期待しつつ、貨物駅構内に「レールゲート」「積み替えステーション」の設置など「JR貨物グループ長期ビジョン2030」で述べています。しかし、社会全体の貨物鉄道の物量が激減している中で、この計画自体でも、増加は微増です。経営者=資本家の労働組合の解体を目的とした国鉄分割・民営化が大破綻しているのです。北海道、四国、貨物に一切の犠牲が集中しているのです。

●資本家の利益のため公共交通機関を投げ捨て、労働者への犠牲転嫁で乗り切る
 ちなみに、2018年度のJR北海道とJR四国の連結営業損益の赤字は、合計532億円。他方、本州JR3社の連結営業利益は合計1兆2985億円。貨物の赤字を加えても、本州3社の収益で十分に補えるのです。
 しかし、本州JR3社の巨額の黒字は、主要株主の旧三菱・住友銀行系列など3大メガバンクや日本生命、第一生命など巨大な金融資本の利益がかかっているためにあくまで分割・民営化を正当化しているのです。
 次元を画する攻撃が始まっています。さらに外注化を推進し、JR本体でも転籍をもたらし、グループ会社は非正規職化をますます進めようとしてくるでしょう。これをうち破るためには、職場全体の怒りを体現した闘いこそが必要です。全JRでの職場丸ごと団結した力のみがこの攻撃をうち砕いて事態を動かしていきます。このJR体制の破綻を見据えて共に闘いましょう。