アスペルガー症候群という言葉が社会的に浸透すると共に、
様々な発達障害に対して、人々の関心が徐々に高まっています
前回はASDについて触れましたが、 前回の記事
今回は同じく発達障害の1つであるADHDについて考えてみましょう。
実に、ADHDに該当する人は、
全体の5~10%に当たるといわれています。
つまり、学校の1学級に3~4人いても、
何ら不思議ではないのです。
同様に、企業や職場といった組織内においても、
相当数の該当者がいる事になります。
ADHDとは、注意欠如多動性障害の略語です。
その心理的傾向は、
『不注意』と『多動・衝動性』に大きく分類されます。
医学的な診断基準があるので、以下に示したいと思います。
1『不注意症状』
・細やかな注意が出来ず、ケアレスミスが多い
・注意を持続する事が困難
・上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える
・指示に従えず、宿題などの課題が果たせない
・課題や活動を整理する事が出来ない
・精神的努力の持続が必要な課題を嫌う
・課題や活動に必要なものを忘れがち
・外部からの刺激で注意散漫になりやすい
・日々の活動を忘れがち
2『多動性、衝動性症状』
・着席中に手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする
・着席が期待されている場面で離席する
・不適切な状況にで走り回ったり、よじ登ったりする
・静かに遊んだり、余暇を過ごす事が出来ない
・衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、
じっとしている事が出来ない
・喋り過ぎる
・質問が終わる前にうっかり答え始める
・順番待ちが苦手
・他人の邪魔をしたり、割り込んだりする
上記の2項目の要素が、それぞれ5つ以上あり、
それが6ヶ月以上続いた場合、ADHDと考えられます。
また、これらの症状が、
家庭や学校・職場など2ヶ所以上の状況で見られ、
さらに、社会的・学業的・職業的(対人関係・学習・仕事)に、
明らかな支障があると確認された場合、
ADHDと診断されるそうです。
つまり、上記の多くに該当しても、
基準に充たなければ障害とは認定されません。
診断基準を見て気付いたと思いますが、
このような傾向を持つ児童は、現実にかなり大勢います
特に男児の場合、『落ち着きがない』、『話を聞けない』、
『不注意で集中力がない』などの子供は、
どこでも当たり前のようにいるでしょう。
ただ、上記の診断基準を充たして障害に認定されるレベルとなると、
全体では少数派となります。
ADHDの症状は、障害認定の有無に関わらず、
精神の発達に連れて次第に薄れていきます。
ADHDが持つ内面的な傾向自体を消し去る事は出来ませんが、
本人の工夫や努力によって、
集団生活には支障のない状態に至れるそうです
ADHDが持つ障害の中で『多動性』に関しては、
早い段階で克服される事が多いといわれます。
しかし、『不注意』と『衝動性』は、
大人になっても色濃く残る場合が多いそうです。
特に社会人になれば、
仕事上での責任や信用、成果などが求められるので、
不注意がもたらす障害は、かなり大きなものとなるでしょう
実際に企業内で勤務するADHD該当者には、
不注意による凡ミスが多く、
さらに何度も同じ間違いを繰り返す傾向があります
また、他人の話を上手く聞けないため、
上司の指示や伝達などをしっかり把握する事が苦手です
同様に、予定や約束、物品の用意などをよく忘れるので、
企業内だけでなく、顧客や取引先にも迷惑を掛ける事になります。
当然、上司からは叱責され、周囲からも批難され、
組織内での評判も悪くなります
それは、本人にとっても周囲にとっても大きなストレスです
度が過ぎれば、解雇、もしくは自主退職に至る事も珍しくありません。
最終的には、人前に出られなくなり、
引き隠りに陥ってしまう人も大勢いるようです
社会に出たADHD該当者にとっては、
『不注意』よりも『衝動性』傾向の方がより問題となります。
衝動性が強いと、
物事が上手くいかない時、つい感情を爆発させてしまい、
反社会的な行動に走りやすくなるのです
症状が重い場合は、
キレて他人に暴言を吐いたり、暴力を振うなどしてしまい、
刑事事件に発展する例さえもあります
以上のように書くと、
ADHDに対して嫌悪感や恐怖感を抱かれるかも知れませんが、
心配は無用です。
発達障害だから、即暴力的になる訳ではありません。
世間には、障害とは関係なく、『キレやすい人』、
『暴力的な人』が大勢います。
それは、生まれつきの資質というより、
むしろ『後天的な性格』による部分が大きいのです。
そもそも、ADHDというのは、
精神医学が勝手に定義した1つのレッテルに過ぎません。
彼らに『不注意』、『多動・衝動性』という傾向があるのは、
生まれ持った脳の個性に過ぎず、
本来は『良い・悪い』で判断出来るようなものではないのです。
診断の有無に関わらず、ADHD傾向を持つ人は、
全体から見るとかなりの数に及ぶといわれております。
実は、幼少時の僕自身にも、かなりのADHD傾向が見られました。
同様の傾向を持つ人は、僕の周囲にも何人かおり、
短絡的に『障害』と定義する風潮には違和感を禁じ得ません
次回も、発達障害について考えてみたいと思います