平成29年5月19日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
内閣官房長官 菅 義偉 殿
文部科学大臣 松野 博一 殿
横浜の教育を考える会 代表 湯澤 甲雄
横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222
国民を育成する教育行政を峻拒する文部科学省の改革(提議)
1、我が国教育行政があるべき基本形
日本国憲法は、前文1項に「自由民主主義を原理とする政治を国是とし、この原理に反する法律は一切排除する」と立憲しており、憲法第15条は「国会議員を含む全ての公務員は、憲法の定めの奉仕者である」、また、憲法第26条には「教育を受ける国民の権利並びに子弟に教育を授ける国民の義務に関し、自由民主主義を原理とする法律の定めるところにより行われる」とする被保障権乃至は公共の福祉を受ける権利を国民は有しており、憲法第99条は「公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定めています。
上記の憲法の精神に則って制定された教育行政の憲法といわれる教育基本法第1条(教育の目的)は、「教育は、人格の完成を目指し、<自由民主主義を原理とする政治を行う>国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身共に健康な国民の育成を期して行われなければならない」と、教育行政は憲法の精神に則り法律の定めるところにより目的的に行われると定めています。
以上が我が国の教育行政があるべき基本形であるので、内閣の下に設置された文部科学省は、同省設置法に基づき教育基本法第1条に定める上記の明確な教育目的に向ってその所掌事務の履行に邁進すべきであります。
これに反する教育行政は、刑法第77条(内乱)もしくは刑法第193条
(公務員職権濫用)に該当すると法律は定めていると理解します。
2、文部科学省設置法の所掌事務の基礎から乖離した教育行政
安倍内閣は発足依頼累次の教育再生計画を立案して実行してきました。しかしながら教育再生と称して行われてきた行政は、上記教育行政があるべき基本形から乖離する政策であり、同省設置法に違反するものが目立ちます。
その典型的事例の第1は、教育基本法に第17条(教育振興基本計画)の条文を新設し、平成25年6月14日「教育振興基本計画」(A4版79頁)を閣議決定し、法律の定めに違反してこれの国会への報告を怠った上に、その基本計画の内容は上記基本形に違反するものであり、更に平成26年6月20日法律第76号にて「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し、全国の知事及び教育長に対して基本形に反する「教育振興基本計画」の教育行政責任を負わせました。
その典型的事例の第2は、義務教育諸学校教科用図書検定基準(平成21年3月4日文部科学省告示第33号)を平成28年4月1日に改正し、検定基準から「教育基本法に定める教育の目的、方針」を削除したために、全国の教育委員会で採択され、義務教育学校で使用される教科書は、憲法や教育基本法違反のものが多くなっています。文部科学省は、憲法第26条の定めに違反し、国会や内閣から遊離して独自の行政を開始したのです。
その典型的事例の第3は、教育基本法前文末尾の「我々は、日本国憲法の精神に則り、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する」の定めを、文部科学省が日本国や国民を忘却し個人や他国を尊重し、全体主義に傾斜する教育行政を随所に見るのです。これは<日本国憲法前文1項に定める「自由民主主義を原理とした政治を国是とする日本国」の未来を切り拓く教育の基本を確立し振興を図るため、この法律を制定する>の意です。日本国を大切にし尊重する国民の育成が図られるべきです。内閣は厳に教育再生に反する文科省教育行政を排除すべきです。
3、自由民主主義の原理の確立
昭和54年国連憲章に次ぐCovenantと称される高位の国際法である「国際人権条約(社会権規約、自由権規約)」が締結され、憲法第98条の最高法規として「これを誠実に遵守することを必要とする」ことになりました。このため我が国の教育行政を含む全般の政治は、同条約において定められた自由民主主義を原理とする法律の枠組みに従うことになっています。(国連憲章の下に在るConvention と称される「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」「児童の権利条約」等の諸条約は、Covenantの下位の条約です。)
Covenantの締結により我が国は、漸く占領軍政時代の日本国民の主権の具体的内容を空白にして認めていない憲法規定から解放されることとなり、国民の主権即ち「国民の基本的人権」の具体的内容を自ら認定することができる、独立国としての国民の資格を得ることができたのであります。
Covenantは既に国会で議決されていますので、憲法改正前にこれの国内法制化に向けて早急に取り掛かるべきです。
以上