人種差別をあおるヘイトスピーチの対策法案が、今国会で成立する見通しだ。
自民・公明両党が参議院に提出した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」を修正することで、4月27日、民進党など野党も大筋で合意した。
与野党が一致してヘイトスピーチに厳しく対応するなか、一部議員から冷や水を浴びせる発言が出た。
自民党の長尾敬衆院議員(53)がツイッターなどで、
「法案では米国軍人に対する排除的発言が対象になります」
と発信。
インターネットテレビ「チャンネル桜」にも出演し、沖縄の地名を挙げて「『○○出ていけ』という言動は許されないということを宣言することが法案の骨子」と述べた。沖縄の米軍基地への反対運動を、ヘイトスピーチとして規制するかのようにぶち上げたのだ。
長年ヘイトスピーチ問題に取り組んできた民進党の有田芳生参院議員があきれる。
「マジョリティーによるマイノリティーに対する差別の扇動が対象で、本邦外出身者だからといって米軍人が対象になるはずがない。
辺野古で反対運動をしている人々をヘイトなどと言うのなら、許し難い暴言。無知なのか、恣意(しい)的な政治的発言なのか知らないが、とにかく水準が低すぎます」
有田氏は、在日のコリアンタウンで、在特会(在日特権を許さない市民の会)などがデモ行進し、「新大久保を更地にしてガス室を作るぞ!」「鶴橋大虐殺を実行するぞ!」などと叫んでいる画像を編集。
DVDにして安倍晋三首相と菅義偉官房長官に手渡した。
「菅さんは電話をくれて、ショックを受けた様子で『これはひどいね』と言葉を失っていた。長尾議員の発言は、与党の立場からも大きく乖離(かいり)しています」
しかし、最近では沖縄がヘイトスピーチの標的にさらされているのだ。
2013年1月、沖縄県の全自治体の首長らがオスプレイ配備反対の建白書を携えて上京したときのことだ。
銀座をパレードすると、沿道の排外主義団体から「売国奴」などと罵声を浴びせられた。
沖縄県名護市のキャンプ・シュワブのゲート前や辺野古の海のテント村にも、ヘイトスピーチや襲撃事件がくり返されている。