「弥生渡来人」はいるのか?
日本人の成り立ちについては、在来縄文人と渡来弥生人との混血だという説が定説化している。埴原和郎氏の「二重構造モデル」だ。これにチャレンジしているのが古代史研究家・長浜浩明氏だ。『日本人ルーツの謎を解く』『韓国人は何処から来たか』(いずれも展転社)などの著書がある。3月29日東京・文京シビック・センターで展転社主催の講演会が開かれた。長浜氏は村田春樹氏と共に弁士を務めた。
日本列島には縄文人が長く住み、そこに朝鮮半島から弥生人が先進的な文化をもって渡来したと従来から言われてきた。天皇家のルーツは朝鮮半島にあるという江上波夫氏の騎馬民族説もあった。これに対し長浜氏は異論を唱える。むしろ、縄文中期に九州などから人々、つまり日本人が朝鮮半島に渡っていったと提唱する。その証拠に半島には縄文土器や佐賀県産の黒曜石が見つかっている。その後、半島では扶余系民族の襲来があった。また十三世紀の高麗期にはモンゴル人や北方シナ人の襲来もあった。いずれの場合も半島の多くの男たちが殺害された。襲来者は男だけで、半島の女と交配していった。これが韓国人のルーツだという。つまり、韓国人とは日本人と北方アジア人との混血だというわけだ。また、渡来弥生人などは存在せず、日本人は旧石器時代人から縄文人へと連綿とつづく列島人だという。しかし、残念なことにこの説は未だに広く認知されていない。国立科学博物館の人類学者・海部陽介氏の近著『日本人はどこから来たのか』(文芸春秋)にも、日本人は在来縄文人と渡来弥生人との混血だと記されている。早くこの「二重構造モデル」が覆ることが期待される。
(五十嵐岳男)