平成28年1月12日
神奈川新聞報道部 御中
湯澤 甲雄 横浜市南区大岡3-41-10
85歳 無職(元都市銀行員)
「真の立憲主義政治の確立に向けて」(意見)
本紙の「論説・特報」への意見募集に応じ以下をお送りいたします。
本紙の「論説・特報」は、我が国の憲法が自由民主主義を原理とする政治を国是とするものであることの認識・理解を完全に無視した状態において行われています。更に、我が国が連合国軍占領下にあって国民の基本的人権と称する主権が認められない時代に憲法が制定され、その後憲法の最高法規となる桑港講和条約、国連憲章並びに国際人権条約(自由権規約・社会権規約)等の国際条約が締結されて徐々に主権の範囲が拡大し、憲法に新しい解釈が加わったことに対する分析・理解をも完全に無視した状態において行われています。
これ等を無視することの正当性を証拠だてるために、自由民主主義の原理や国際条約に対する不勉強な憲法学者、思想家、精神科医、市民運動家、学生をそろえて、本紙報道部と同じ内容の発言をさせて記事にしています。これにより本紙の報道は、極めてヒステリカルに法理に拠らず突然に「憲法違反」「戦争反対」と叫び世の不安を煽り、憲法に基づき行われている安倍内閣の自由民主主義政治を真っ向から否定しています。
本紙の「論説・特報」が自由民主主義の原理以外の政治を望むのであれば、「言論の自由」を行使して、その政治の原理をキチンと記事にすべきです。但し、それは憲法前文1項を否定する革命ですから、その言論の法制化は憲法により一切禁止されていますので、正に立憲主義に反する政治であり言論であることを理解すべきです。
戦争が嫌だからあるいは戦争をやりそうだからと勝手に将来を予測して「言論の自由」の権利を行使する自由はありますが、「上司の命令により法律に従い自由民主主義政治を行う義務のある国家公務員一般職に対する、活動能率を低下させる怠業的行為をあおる何人の行為も、国家公務員法の刑事罰の対象とする」規定があることを想起すべきです。
このように本紙の「論説・特報」は、極めて無責任な立場に立つ偏ったものであります。そこで新聞綱領に「新聞は公正な言論のために独立を確保する」とあるように、本紙は現行憲法下にある日本国民の一員として公正な言論即ち法律に則った言論の報道に徹して独立を確保すべきです。公正な言論でなければ、本紙の独立は不要であり解散すべきです。
このような見地から、本紙の「論説・特報」にて述べられた不公正な言論を矯正するために必要な事柄について、以下若干詳しく述べさせていただきます。第1に、公正な言論即ち立憲主義に則った報道を行うために、報道部に憲法前文1項において自由民主主義を国是と規定している、その自由民主主義の意味・法理を理解できる人材を配置すべきです。自由民主主義を原理とする政治以外の法律は一切排除する憲法上の規定に沿った公正な報道を社是とすべきです。
第2に、103条ある憲法全条文の内第9条の条文を除く102条文は、第11条の国民の(基本的人権=主権)に対し、永久に保障する即ち永久に安全保障する構文となっており、永久の自衛権を定めています。しかし憲法制定時には基本的人権の無い敗戦国民でしたから、基本的人権の具体的内容が空白とされており、自衛する対象が無かったために、苦心して自衛権を第9条の中に芦田修正として挿入しました。その空白に、昭和26年に締結された桑港講和条約で「領土」と「個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することの権利」が基本的人権として入り、憲法の最高法規として定められました。また、昭和54年に締結された自由権規約、社会権規約で「国民の基本的人権の全容」並びに「基本的人権」と「自由と権利」との法秩序が定まり、これも憲法の最高法規として遵守が求められることになりました。即ち、基本的人権の具体的内容が徐々に定まることにより、憲法第11条は国民の基本的人権=主権を永久に安全保障する即ち永久の自衛権を認める条文に変化し、第9条を除く他の憲法条文全文がこれを支える構文となっている憲法全体の有効性が生じたと理解すべきです。
しかしながら、本紙報道部と本紙に登場する憲法学者は、昭和26年以前に日本国民に主権の無かった占領軍政時代の憲法解釈をフリーズして、それをもって立憲主義を唱える根本的誤りを犯しています。この時代は、前述「空白」の中に「表現の自由」等の「個人の自由と権利」条文を挿入して「基本的人権」と詐称し、これを憲法が尊重する対象とする傍ら、「個人の自由と権利」の自由を剥奪する全体主義に傾斜する世界に類を見ない憲法解釈が横行しました。貴社報道部に自由民主主義の法理を定めた国際条約を英語の原文で理解できる人材を配置し、憲法を正しく理解し、憲法解釈の根本的誤りを正すべきです。
第3に、現行憲法を解釈するに当たっては、公職追放という公務員の生殺与奪の権を握ったマ司令部憲法制定委員に共産主義者が居たので、マ憲法草案原文と憲法文との間に作為され根本的相違があることを理解すべきです。典型的事例は、マ憲法草案第1条「the emperor shall be the symbol of the state and the unity of the people」の中のUnityという単語の翻訳を無視してSymbolに変更したことによって、「deriving his position from the sovereign will of the people, and from no other source.」を捏造、挿入しています。
この文章は、Unityがキチンと翻訳されていればありうるはずの無い文章です。英国がUnited Kingdom、米国がUnited states、日本はUnited people(天皇と国民が一体)の国であると草案は規定していたのです。更には、草案第12条「all japanese by virtue of their humanity shall be respected as individuals.」が、憲法第13条「全ての日本人は個人として尊重される」と、捏造されています。日本に全体主義革命を誘導する布石と見られます。
第4に、憲法第9条の理解に関し、貴紙報道部は三つの誤りを犯しています。 第1は、憲法第9条は、他の全条文が第11条基本的人権(=主権)の永久保障を支えるものであるのに対し、国民が一方的に戦争放棄を宣言した文章です。従って国民の意思で即ち国会の一般決議で、第9条の条文を踏まえた上で従来の解釈を変更することは、憲法の許容範囲であると理解すべきです。
第2は、憲法第9条はポツダム宣言に基づく日本軍の無条件降伏と占領軍政のために設けられた条文です。但し、我が国独立後の自衛隊等が米国等の傭兵に使役されることを防止するため、時の内閣苦心の外交戦術として、ポツダム宣言で強要されて挿入された第9条を、方便として利用して集団的自衛権の行使を避けてきたと思われます。このことに目くじら立てるのはナンセンスです。
第3は、第9条冒頭に「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」とあり、これをもって第9条が平和憲法であると称していると思います。その理解は根本的に誤りですから本紙とその同調者は以下の如く修正すべきです。国連憲章の精神を採り入れて米国により草案された我が国の憲法は、前文冒頭に自由民主主義を原理とする国家であるとことを国是として定めています。憲法の最高法規とされている国連憲章とそれと一体を成す自由権規約、社会権規約により定められた自由民主主義の原理の中核を成す基本的人権と称する国民の主権は、世界の自由、正義、平和の基礎であると定めています。従って、基本的人権を永久に保障する即ち尊重すると定めた憲法第11条があることが平和憲法であるということです。しかも国連憲章締約国は、一国の基本的人権は他の加盟国が侵してはならないと争い事を避けることを締約しているばかりでなく、基本的人権を自衛する個別的あるいは集団的自衛権をもって、国際紛争を鎮圧する機能を備えているからです。従って憲法第9条をもって平和憲法と唱えることは、全く世界に通用しない「論説、特報」であるということを認識すべきです。
第5に、国際条約では基本的人権とは「家族や共同体の人々が歴史的に培った尊い習俗(習俗宗教、伝統、文化、道徳、領土、財産、法律等)と慈愛の心」(原文「recognition of the inherent dignity and of the equal and inalienable rights
of all members of the human family is the foundation of freedom, justice and
peace in the world」)であると規定しています。従って我が国の場合は、憲法第11条の下に「基本的人権認定法」(仮称)を定め、国会決議によりその具体的内容を定める決議を行い、自由民主主義を原理とする政治を完成させる必要があります。従って本紙報道部は、立憲主義に則り、自由民主主義政治の完成を目指す公正な報道を行い、以て、日本国民の基本的人権を尊重する新聞の使命を全うすべきであります。
なお、私は国連憲章の下に自由民主主義を原理とする政治と教育勅語と共にあった大日本帝国憲法下にある政治とは、中國人をpig tailと蔑称し数百万人を奴隷として売買した欧米露が次に、中国を橋頭堡にして我が国に攻略目標を定め、植民地化し八つ裂きにして奴隷にする戦略と、これに対する我が国民の強い反発の歴史を除いてみた場合、相似形であると感じているところです。また、「戦いながら倒れた国民は再び立ち上がった。おとなしく降伏した者はそれで終わった」と、チャーチルが語った言葉を思う時、礎となって日本国民のアイデンテテイをよくぞ守った3百万英霊に対する感謝の念が改めてこみあげてきます。
以上