実際は、左右の対立ではなく「ばか」と「一般人」 とも。いい記事だ。 | 日本世論の会 本部

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 統一地方選前半戦の結果は、自民党の圧勝に終わった。
すべての知事選で与党推薦の候補が当選し、大阪府以外の40道府県議会で自民党が第一党を維持した。
安保法制をはじめ、さまざまな問題で安倍政権への厳しい非難を続ける新聞には、溜息しか出てこないだろう。

 しかし、翌13日付の東京新聞社説によれば、「安倍政権は地方の意見や世論にも謙虚に耳を傾けるべきである」とのことで、これは民意を反映したものではなかったらしい。
同紙は、わずか1週間前の6日付では、翁長雄志沖縄県知事と菅義偉官房長官との会談を論評し、「翁長・菅初会談 民意の重さ受け止めよ」という社説を掲げていた。
つまり、自分たちが支持する側が勝利したときと、逆の場合とでは、選挙結果が出ても全く異なる主張がなされるのである。

 選挙の結果をあらかじめ予想していたのか、朝日新聞にも興味深い記事があった。
投票前日の11日、日本の「右傾化」について、丸々一面を使って「耕論」というページで大特集が組まれていた。
そこには学者、政治家、ライターの3人が登場し、意見を披瀝(ひれき)していた。
それは、いまだに朝日は左右の対立という単純な視点しか持ち得ていないことを示すものでもあった。

 1989年のベルリンの壁崩壊以降、左右の対立は、世界史的にも、また日本でも、とっくに決着がついている。
自民党と社会党との左右の対立で始まった「55年体制」の思考からいまだに抜け出すことができないメディアのありさまは“マスコミ55年症候群”とでも呼ぶべきものだろう。
だがそんな旧態依然の論調とは無関係に世の中はとっくに違う段階に移っている。

 それは、「左右」の対立ではなく、「空想と現実」との対立である。
冷戦下、米国の軍事力の傘の下、空想的平和主義を謳歌してきた日本が、中国の膨張主義と軍事的脅威にいや応なく向き合わざるを得ない時代を迎えている。その現実を前に、「相手に手を出させない」ため、つまり「平和を守る」ために、さまざまな手を打たなければならなくなった。
しかし、左右の対立という単一の視点しか持ちえない朝日は、「日本の右傾化が問題」という論調を今も続けている。

 実際には、どうだろうか。
左右の対立などではなく、すでに「空想家、夢想家(dreamer)」と、現実を見据えようとする「現実主義者(realist)」との対立、つまり“DR戦争”とも言うべき時代が来たのではないだろうか。
はからずも、この朝日の「右傾化」の記事の中で、国際政治学者の三浦瑠麗(るり)さんがこう語っている。
「これは中国の軍事的脅威の増大と米国の力の低下という実情にリアルに対応するものと見るべきで、右傾化とまでは言い難いと私は考えます」

 それは、簡潔にして実に明快な見解であり、同時に朝日に対する痛烈な皮肉でもある。日本の新聞は、いつまで時代の変化に取り残された“ドリーマー”であり続けるのだろうか。
(門田隆将)