「遅れた発車」  | 日本世論の会 本部

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「遅れた発車」    3-23   村田春樹
昭和22年頃のこと。
敗戦で荒廃した地方を視察激励するため昭和天皇は全国を巡幸されていた。
とある巡幸のご出発日。東京駅の貴賓室で休憩された陛下は駅長の先導ででホームへ。

お召し列車はぴかぴかに磨かれて待機していた。
乗務員も選抜されたベテランばかりであり張り切っていた。
一分一秒の誤差もなく発車させ?運行するのが東京駅の駅長の義務であり、
また国鉄職員全ての誇りでもあった。
またこのお召し列車の発車のホイッスルを吹くのが国鉄職員最高の栄誉で有り
鉄道員等しく仰ぐポストでもあった。
駅のホームは見送りの顕官貴人で一杯で有り、その後ろと
向かいのホームは同じく見送らんとする民衆で黒山の人だかりであった。
皆貧しいぼろを着た痩せた庶民ばかりであった。
駅長は人生最大最高の瞬間のホイッスルを今正に吹こうと手に持って口にくわえた。
そのとき期せずして黒山の人だかりから自然発生的に「君が代」歌われ出した。
二小節目からは駅舎を揺るがす大合唱となった。
駅長はホイッスルをくわえたままおそらく逡巡したのだろう。
周囲の駅員や列車の運転手は
「発車が遅れてしまう!駅長はなぜホイッスルを吹かないのか。」
駅長に吹くように合図を送る駅員もいた。
しかし駅長は吹かなかった。
そして大合唱が終わるとヒュルヒュルと弱い音で鼻水とともにホイッスルが鳴り、
列車は遅れて動き出した。
お召し列車の発車が遅れるという国鉄開闢以来の大椿事であり前代未聞の大不祥事でもあった。
「汚名」を千載に遺したこの駅長のお名前を私は知りたい。
            以上


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