2015年1月29日
人民日報社 御中
湯澤 甲雄 横浜市南区大岡3-41-10 電話045-713-7222
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中国政府に対し国連憲章に基づく外交を望む(意見)
2014年12月3日、人民日報海外版コラム「望海楼」掲載<日中両国関係は「2000年の友好」、「50年の対立」文:葉小文(イエ・シャオウェン)本紙特約論説員、新中日友好21世紀委員会中国側委員>について、日中友好促進の観点から意見を述べさせていただきます。
1、「2000年の友好」
<両国は一衣帯水で、相互交流、相互師事、相互敬慕の長い歴史を持っていた。両国の友好的交流の歴史の長さ、規模の大きさ、影響の深さは世界の文明発展の歴史においても異例だ>と葉先生ご指摘の通りであります。
例えば、中国に漢字を学んだ日本の福沢諭吉や西周等は、欧米の現代語を表す日本製漢字を次々と作り、それを普及させることにより西欧近代化を一般国民にわかりやすくした功績があります。それらの日本製漢字が中国漢字に当てはめられて、人民日報の紙面の60%は語源が日本製漢字で埋められていると聞きます。例えば、「人民共和国」「共産党」なども日本製漢字です。また例えば、戦前の日本の農業の道具や農法は、雲南省大里とよく似ているといわれています。これは大里にあった段氏が、唐代に滅亡し日本国に亡命してその農法が広く伝えられたとの事にて、段の姓を引き継いだ子孫が今も居られます。また、秦から来た一族が京都に広隆寺を建て、醸造酒の製法を伝えたことが今の「日本酒」の源とされている等数限りなく伝説があります。
日本人は古来多神教の習俗(Custom)を持つ民族です。古来神には良い神もあれば悪い神もあって、悪い神は人間の心の弱さを現す鬼と称される神であって、改心すれば良い神になるとされています。靖国神社はそのような習俗宗教の宗教施設です。そこは、国のために不幸にして亡くなられた御霊を追悼する場所であると同時に世界平和の祈りを捧げる場所の一つであり、日本文明の一つでもあります。日本国の首相を含む日本国民が靖国神社を参拝することについて、連合国総司令部は何の干渉もしませんでした。
国連憲章に定める<国民の基本的人権>(<=the inherent dignity and of the equal and inalienable
rights of all members of the human family> is the foundation of freedom, justice and peace in
the world,)を尊重する行為であるからです。
国連憲章と一体を成している社会権規約、自由権規約第5条には、「習俗として存する、あるいは、認知された国民の基本的人権を制限したり、又は侵してはならない」とする国際条約があります。長い歴史の過程で、神仏を信仰する習俗宗教を亡ぼしてきた中国は、日本国の2000年の習俗宗教の祭祀を侵す言動を慎むべきであります。同規約第5条は、国連憲章の根幹に係る加盟国の約束事であり、中国政府も加盟国
の一員として遵守責任を負うことによって、日中相互敬慕の2000年の友好をつないでいくべきであると思います。
中国は去る12月13日を南京大虐殺犠牲者国家追悼日と定めました。毎年12月13日に国は公式追悼行事を行い、南京大虐殺犠牲者及び日本帝国主義の中国侵略戦争の期間に日本の侵略者に殺戮された全ての犠牲者に哀悼の意を捧げることとしました。これに対し、中国の学者からは「犠牲者数30万人は具体的数字でなく適当な数字であり、概念でしかない。」「政権の変動により価値観も変動して追悼行事が混乱する。」「国民の支持を受けた民主主義政治制度でないために公式追悼行事の継続に混乱が生じる」「文化大革命博物館をもうけるべきだ」等の批判があります。しかしながら死者をいたわる心は、家族愛とともに人間愛の原点にして宗教心や習俗の芽生えでありますので、これを中国国民の基本的人権に昇華させていけば、日本に敵意を燃やす場所ではなく、靖国神社参拝と同様に日中友好、世界平和の祈りの場所となるに相違ありません。
2、「50年の対立」ではなく「100年の対立」
歴史を100年のスパンでみなければ、史実が歪曲されてアジアの歴史は理解不能です。全世界を侵略し植民地化を目指していた西欧諸国にとって、植民地経営のための黒人奴隷の安定的確保は必須の条件でありました。然るところ、米国の北部で工業が発達するにつれて労働者の需要が高まり、
米国南部の農家に働いている奴隷を北部で働かせるために、米国で黒人奴隷解放運動が高まりました。
黒人奴隷解放の声が高まるにつれて、大植民地を経営する英仏は奴隷供給地をアフリカから中国大陸に移すことにしたところ、当時の清は鎖国政策をとっていました。そこで、アロー号戦争を起こして清を屈服させて、開港させました。同時に両国は、中国国内河川通行権や関税権を奪い、清皇帝を傀儡政権となし、
それ以来、清は独立国ではなくなりました。
欧米各国は、黒人奴隷を代替させた中国人奴隷をPigtailと獣以下に蔑視して、主に広東省、や福建省で奴隷狩りを行って、開港された港から続々と船に積みこみ、ビルマ、マレー、インドネシア等の東南アジア一帯の他に、米国等へ数百万人が売られていきました。インドネシアには、中国人奴隷の町即ちスラバヤという町もできました。そのころ多くの中国人死体が、沖縄の各島にうちあげられました。
Aborigineである日本人は、中国人の悲劇を目の当たりに見て、植民地にされない独立を絶対に守らなければならない決意を迫られたのです。欧米各国は、支配した中国市場を守るべく、浙江財閥等を買弁資本と化して、そのもとに蒋介石軍等の私兵を雇わせて、中国市場に参入する日本人に攻撃を仕掛けて取引不能に追い込み、中国市場で売れる日本の産
品はマッチと仁丹(口臭清涼剤)だけといわれるほど追い込まれました。中国における日本の権益を保護するために派遣された日本軍は欧米の傀儡軍である蒋介石軍の私兵と戦わされる羽目となり、このため日本ではこれを「事変」と称し、中国軍との戦いではないので「戦争」とは称していません。この間日本は、世界市場を支配した欧米資本より近代産業用の原材料を言い値で買わされる状態が続き、貧困のどん底に落ち
ていきました。
一方東南アジア一帯に配置された中国人奴隷は、識字能力、算術能力においてAborigineより優れているところから、華僑(Overseas Chinese)と称される白人植民地経営の中間管理者が続出しました。
Aborigineにとってみれば、華僑も侵略者であり、支配者であります。第二次大戦後における東南アジアの民族独立戦争は、白人との戦いであると同時に華僑との戦いでもありました。中国は過去100年の間侵略者である欧米人の手先となって、多くのアジアの民族を苦しめた歴史を歪曲することなく直視し、責任を感じなければなりません。勿論中国人以上に欧米人は、過去の歴史に責任を負うべきです。
1949年10月1日に共産党は北京市にて中華人民共和国の独立宣言を行い、この結果1856年アロー号事件以来94年間続いた欧米植民地主義勢力の中国支配が漸く終結しました。
なお、中国政府が計画している9月3日の「反ファシズム戦争勝利70周年」の軍事パレードは、中国共産党軍と日本軍とほとんど戦ったこともない史実に基づく空威張的周年事業とすることよりも、積年の人民闘争の史実に基づく「反植民地闘争勝利67周年」とする方が、世界史的意味があり人民の心に訴えるものがあると思います。
3、国連憲章に則した国家運営の徹底
第二次大戦後、国連憲章が成立し、調印国は特に過去数百年間にわたり植民地主義を遂行した欧米諸国は、過去の歴史に対する外交上の責任を一切負わず、将来の自由、正義、平和の世界に責任を持つことにしました。その代償として、植民地の独立を認め、植民地権益に対する請求権を行使しました。
国連憲章は、加盟国の全ての国が第一次大戦、第二次大戦の反省に立ち、絶対に第三次大戦を起こさない決意の下に作成されたものにして、国際法として定められている社会権規約、自由権規約に則った国家運営を粛々と行うことを約束したのであります。それは既存の国境の内に居る自国民の基本的人権を国が尊重し、他国民のそれを制限し又は侵さない国家運営を約束したものです。
然るところ、中国はこの国際公約を遵守することなく、依然として福沢諭吉の「脱亜論」の「アジア東方の悪友」に踏み留まっていることは誠に残念であります。
2014年12月6日、華東師範大学の許紀霖(シュー・ジーリン)教授は、「中国は経済的に台頭しただけで、文明としてはいまだ台頭していない。今日の中国人は19世紀の欧州人とよく似ており、貪欲さと欲望に満ち、弱肉強食の世界にある。中華文明の象徴とされる孔子や朱熹、王陽明らが仮に生き返ったら、欧米よりも欧米らしくなった中国に驚くだろう」と、「中国の脅威」について講演しています。
また同教授は、「中国は昔の日本のように欧米に学ぶ模範生となったが、その学習は甚だ偏っており、「文明のテスト」にはいまだ合格できていない。大国は実力だけで能力が備わっていなければ短命に終わってしまう」と懸念を表明しています。
オバマ米国大統領は、「領土、離島、岩礁などに関する紛争は国際的な対立を惹起する恐れがある」「どの国も人々も安全で平和に暮らす権利がある。アジアの安全保障は力(influence)や強制や大国による小国の いじめ(big nations bully the small)の上に立てられてはならない。相互の安全保障、国際法と確立されている国際規範、および紛争の平和的解決原則に基づかなければならない」「われわれは中国に、他の諸国と同じルールを尊重するよう促している」と明確に指摘し、「中国の恣意的、国際法に基づかない行動に自制を促し、世界において責任ある役割を演じる中国を歓迎する」と、歴史に逆行する中国を牽制しています。
日本国は言論の自由(発言の自由)が保障された国ですから国民の間に様々な言論が行われています。
その中で日本国民の基本的人権とされる家族や共同体が永い歴史の中で培ってきた習俗、伝統、文化、法律、領土、領海、財産や人間愛の心を尊重する言論のみが、法律上の効果を有する言論です。法律上の効果を有しない言論をもって、自国民の基本的人権を制限し又は侵すことは勿論、他国民の基本的人権を制限し又は侵すことは、社会権規約、自由権規約によって禁止されています。
ところが中国政府は、 中国人民に対してそもそも言論の自由を認めない国際条約違反の問題があります。
この他に中国政府は、日本国民が言論の自由の下に行っている法律上効力の無い言論を採りあげて、これを効力のあるものに転化させるべく、これを外交問題として日本政府を糾弾し、日本国民の基本的人権を制限し又 は侵す行動に出ています。つまり中国政府は、国際条約違反の問題を重ね塗りして日中友好を損ねています。
日本国内における法律上効力の無い言論は、国連憲章に基づく自由民主主義の言論ではなく、戦前のソ連共産党時代のコミンテルンの流れを汲む勢力の日本国を亡国に追い込む言論であります。我が国は、国連憲章を深化して遵守することはあっても、我が国が歴史を逆行させて国連憲章に反する政策に組することは絶対にあり得ないのですから、中国政府は国連憲章に反する華夷秩序を基準とするのではなく、国連憲章に沿った対日外交を行うべく内政並びに国際外交の根本を見直すべきです。以上