■7.報道機関とプロパガンダ機関の違い
しかし、鈴木貫太郎は8年間も侍従長として昭和天皇に仕えた人物であり、終戦を実現するという大御心のもとに首相に任命されたのあった。無条件降伏という非常識な要求を掲げるルーズベルト政権と、中国大陸では120万人の勢力を温存する軍部強硬派の間で、いかに折り合いをつけて降伏に持ち込むか、鈴木首相の苦心はそこにあった。
前節の必勝発言は軍部向けのカモフラージュであったが、同時に4月12日にルーズベルト大統領の逝去に弔意を示して世界を驚かせたり、6月8日の施政方針演説でも「わが天皇陛下ほど世界の平和と人類の福祉とを冀求(ききゅう)遊ばさるる御方はない」と発言している。
鈴木が首相として登場した時に、ニューヨーク・タイムズは「和平の打診を試みるのではないか」という日本問題専門家たちの意見を紹介している。アメリカのニューヨーク・タイムズに見て取れることで、国内の朝日が分からなかったはずはない。しかし朝日は徹底抗戦のプロパガンダを続けた。[b,c]
冒頭の「一億火の玉」記事が掲載された8月14日時点で、当時の東京朝日編集局長、細川隆元の著書『実録朝日新聞』によると、朝日社内ではポツダム宣言受諾をめぐる政府内の動きを掴んでいたという。朝日は紙面上では、そんな事はおくびにも出さずに、「一億火の玉」などと扇動を続けていたのである。
朝日が真の報道機関ならば、空襲下で倒れ行く国民の事を思われる昭和天皇の大御心を体し、鈴木首相の真意を察して、戦意高揚ではなく、和平への機運作りをする道もあったろう。
それもないままに、突然、8月15日の玉音放送を拝した軍も国民も粛々と降伏を受け入れたのは、皇室への信頼が厚かったからに他ならない。国民はそれまでの朝日の扇動にも踊らされなかった。
■8.戦前も戦後も一貫したプロパガンダ機関
弊誌865号、866号では「中ソの代弁70年~朝日新聞プロパガンダ小史」と題して、戦後の朝日がいかに共産主義国家に肩入れした報道を続けてきたかをまとめた。[d,e]
そこに見られるのは、事実を国民に知らしめ、その上で自社の論説を国民に訴える、という報道機関の姿ではない。事実を歪め、あるいは隠し、自社の思う方向に国民を誘導しようというプロパガンダ機関の姿である。今回は、戦時中の朝日の報道を見たが、ここでも同じ姿勢が明らかに見てとれる。
どういう方向に誘導しようとしているのか、その方向は別にしても、そのプロパガンダ体質は戦前、戦後を通じて変わらない。国民を無知なる大衆と見下し、自分こそが日本の目指すべき道を知っている、という歪んだエリート意識がそうさせるのか?
いや、と弊誌は疑っている。戦時中のソ連や中国共産党は日本を中国や米英と戦わせて、戦火の中で共産革命を起こし、ソ中日の「赤い東亜共同体」を作ることを戦略としていた。その戦略に乗って動く少壮軍人や革新官僚もいた。朝日の尾崎秀實記者も、ソ連スパイ・ゾルゲと結んで機密情報をソ連に流し、死刑になっている。[f]
朝日の中には、尾崎以外にも、戦火のもとでの共産革命を狙っていた輩がいたのではないか。と考えると、本土決戦や終戦前日まで徹底抗戦を訴えた理由が分かるような気がする。この仮説が正しいとすれば、戦前も戦後も朝日は方向も姿勢も一貫した売国プロパガンダ機関である、ということになる。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(028) 平気でうそをつく人々
戦前の「百人斬り競争」の虚報が戦後の「殺人ゲーム」として復活した。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h10_1/jog028.html
b. JOG(100) 鈴木貫太郎(上)
いかに国内統一を維持したまま、終戦を実現するか。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h11_2/jog100.html
c. JOG(101) 鈴木貫太郎(下)
終戦の聖断を引き出した老宰相。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h11_2/jog101.html
d. JOG(865) 中ソの代弁70年 ~ 朝日新聞プロパガンダ小史(上)
敗戦直後からソ連崩壊まで、朝日新聞はソ連の忠実な代弁者として発言してきた。
http://blog.jog-net.jp/201409/article_2.html
e. JOG(866) 中ソの代弁70年 ~ 朝日新聞プロパガンダ小史(下) 朝日は、中国の国内代弁者としてモンスター国家の成長に一役買った。
http://blog.jog-net.jp/201409/article_4.html
f. JOG(263) 尾崎秀實 ~ 日中和平を妨げたソ連の魔手
日本と蒋介石政権が日中戦争で共倒れになれば、ソ・中・日の「赤い東亜共同体」が実現する!
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog263.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 安田将三、石橋孝太郎『朝日新聞の戦争責任―東スポもびっくり!の戦争記事を徹底検証』★★、太田出版、H7
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4872332369/japanontheg01-22/
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