2018年が終わるまで、東南アジアの補習校での体験を書いています。

 

担任は、小学部も中学部も教えていました。

小学部はなんとか先生が見つかるけれど、中学部を教える先生は見つかりません。

 

そして、担任は、複数の学年を教えていました。

通常は、1学年1担任が当たり前の中、人手が足りないことと、

担任が器用にできることから、いくつもの学年を抱えていました。

 

中学3年生の女子生徒がいました。

いつも伏し目がちで、ほとんどしゃべらず、コミュニケーションが難しかったです。

インター校は、学校行事が多かったり、夏休みが長いため、その日、

現地校に通っているこの生徒と担任の2人きりの授業時間がありました。

 

何かのきっかけで、女子生徒がせきを切ったように話しだしました。

「先生!私はとっても傷付いているんです。友達で仲良く授業を受けていたのに・・。

また来週って言ったのに、友達が急に補習校を辞めて、理由もさよならも言わずに、いなくなってしまった気持ち、先生にはわかりますか!。私は傷ついているんです!!」

しばし茫然とした後、担任は言いました。

「辛いですね。でも、先生、この男子生徒と会ったことも、話したこともないので、

 先生もどうしてなのかよくわからないんですよ」

それから、たくさん話をして、この女子生徒と担任は仲良しになりました。

 

担任は、咄嗟に「嘘」をつきました。

担任は、この男子生徒が補習校を辞めた理由を知っていたのです。

 

ある日の教師会で、担任がクラス内のいじめを相談しようとして、逆に親が、

いじめっ子を担任の授業出席を拒否したことが取りあげられました。

いじめの事は横に置かれたまま、ただ、担任の不注意な行動で、

生徒が出席拒否をしている事態になったことの責任追及です。

その時に、「同様の問題が他のクラスにもあった」と聞きました。

男子生徒が数学のミニテストの時、「この答えがわからないので、教えてください」

「私の授業をちゃんと聞いていれば、わかるはずですよ」と答えた先生。

その後、ものすごい抗議が事務局と先生に届き、出席拒否、その後、補習校を辞めたという事実を。「息子をバカだと思ってんだろうー!」と男子生徒の母親。

 

たまたま教師会の後、その先生と一緒に帰りながら、

「お互い、大変なことになりましたね」

「はい・・・、でもこんなことで授業に出ないとか、補習校辞めます??」

「う~ん、でも、こういう時のお母さんたちの怒りってすごいんですね」

「私に送ってきたメール見ます、長文で、喧嘩腰でひどいこと書いてありますよ」

担任は見る勇気がなかった、見たら、補習校にもう行けなくなりそうで。

 

担任が生徒についた一度だけの嘘。

同僚をかばってついた嘘でなく、「教師としてこれは本当のことを言ってはいけない」と

その時は思ったのです。泣きはらすほど、事務局に怒られた後だったからか。

でも、女子生徒のずっと悩んでいることの答えを知っているのに、言わなかったという

罪の意識もあるのです。

私は女子生徒に嘘をついたけれど、彼女の傷が癒えるまで一緒にいてあげようと

その時、本当に思ったのです。

自分がその後、辞めさせられるとは想像がつかなかったから。