東南アジアの小さな都市には、ひとつしか日本人用の塾がありません。

そして、そこは授業料も高いし、少人数なので、通うことも困難です。

そんなところに、お母さん達有志が集まって、日本人補習校ができました。

 

 

ひょんなことから、補習校の教師になってしまいました。

理由は、小学部のあるクラスを教えていた校長先生が突然、辞めたから。

「ん??、校長が急に辞めた?なぜ?」

その理由を知らないまま、教科書を渡された担任はクラスに入りました。

 

なんだろう?この空気は。

自己紹介の後、授業にさっそく入ろうとすると、勢いよく手があがりました。

 

「校長先生は、いつ帰ってくるんですか?」

「先生はここに入ったばかりで、校長先生に会ったこともないし、よくわからないのです」

生徒たち、ジーーーっと担任を見つめる。

 

この補習校には、おやつタイムがあります。

自宅から持ってきたおやつを食べる楽しい時間のはずです。

担任「あ~、疲れた~」とコーヒーを飲みながらイスに座って一休み。

そこに、あの質問をした生徒が目の前に立ちます。

「どうしましたか」

生徒から答えは返ってきません。ただただ、ジーーーっと担任をみつめます。

睨まれていると言った方が正解かな。

担任が座っていても、身長が同じなんだね、まだ低学年だもの。

 

休み時間中、ジッと無言で担任を見ていた生徒の心を代弁するとしたら、

「この先生、校長先生の代わりに来たんだ。いつまでいるんだろう。」

「この人、いい先生?それとも悪い先生?」

「誰なんだろう」って感じだったでしょうね。

 

初日はこんな一日でした。

誰か、校長先生が辞めた理由、教えてください。