絵師 高橋天山ブログ -3ページ目

絵師 高橋天山ブログ

日本画家が語る日本文化の素晴らしさ
菱田春草を語る


院展同人 高橋天山ブログ


春草の真価を良く理解し、崇拝していたかの横山大観が、終生手放さなかった作品がこの、【秋野美人】


大観はこの春草の美人画を、折に触れて取り出し、床の間へ飾って、その画格の高さを再認識して、自身の制作に取り入れていたのでした。





院展同人 高橋天山ブログ


部分拡大図です・・・・




人気者の上村松園の美人画、並び称される、鏑木清方の美人画、・・・それらを遥かに凌駕し、ブッチギリの品位。


まったく追随を許さぬ高さであります。


鎌倉時代の大名人、藤原信実が、この“高さ” に匹敵するでしょう・・・




【今様美人】



院展同人 高橋天山ブログ


春草は明治7年生まれ。


明治時代の憧れとしての美人像なのでしょう・・・


サルみたいな、茶髪、ソバージュ・・・とは・・・およそ。




歴史上の女性像もいくつか描いています。



【稲田姫】



院展同人 高橋天山ブログ


ヤマタノオロチの生贄になりそうな・・・姫君。


無事、スサノオノミコトに助けられましたが・・・困惑の美!




【王昭君】



院展同人 高橋天山ブログ




院展同人 高橋天山ブログ




院展同人 高橋天山ブログ




さらに、平家物語から 【仏御前】



院展同人 高橋天山ブログ



気品そのもの・・・






先にご紹介した、【砧】


人物のディテールはこれ・・・


    
院展同人 高橋天山ブログ


木槌を打つ、とんとん・・・と言う音が満月に照らし出されるススキの穂の数の様に・・・・繰り返し、沢山・・・・


なんとも言えぬ情趣が浮かぶのは、徹底的な計算があってのことなのです。作者の意図がそれはそれは・・・高い境地にある為に、意図された仕掛けにも気付かないままに圧倒され、魅惑されてしまうのです。ネ。



院展同人 高橋天山ブログ


地面のほの明るさが人物を際立たせています、暗がりの中のススキ穂と満月とが、美しいい対照を見せ付けます・・・


静かな中に、とん、とん、とん、・・・・音が聞こえてくるような、

平和な心に満たされるような・・・愉悦が湧き出して来るのです。



大天才菱田春草は、このような意匠をごく、当たり前に生み出し続けた人です。


今大人気のフェルメールが、いくら繊細であっても、・・・・・単なる写実の域から一歩も出ていないのに、自虐史観に囚われた現代日本人の目には、かけがえのない宝物に見えるらしいのですが・・・・


この春草作品を隣に並べたら、西洋の価値観の方が凄い!と洗脳されてしまった、現代日本人であっても・・・・少しは、目が覚めるのではないかと思います。


覚めないまでも・・・・ワルクナイナーーー、・・・くらいは、感じ取ることでしょう。


写実は美にあらず。単なる技。


写実にとどまっているのは、未だ幼稚・・・・と、

理解できたときから初めて本当の創作が生まれるもの・・・



この大天才春草は、作品でその事を雄弁に語っているのです。





院展同人 高橋天山ブログ



秋気みなぎる空気感をお楽しみ下さい・・・・









神秘、と言う言葉がありますが・・・


この世の不思議、と言うものを描き出してしまえるのが春草です。


気韻生動、は勿論の事、生命そのものを掛け値なく、直裁に表出してしまう力は素晴らしい。


ご紹介した【菊慈童】の繊細なディテールがこれ




院展同人 高橋天山ブログ



山の彼方のその奥に、菊の咲き乱れる地があって、朝露に濡れた菊水が湧き水となる、そこに暮らす、不老長寿の菊の精霊・・・・


まるでホントのこと???  みたいです。



夢、空想、幻想、・・・・・ありえないことがあるように描く。25歳ですよ!!



もう少し円熟したころ・・・といっても32歳の作ですが、

音を描いた作品をご紹介しましょう。


【砧(きぬた)】




院展同人 高橋天山ブログ


織りたての絹を柔らかくするのに、木槌で叩いてゆくその音が、ススキ原の中に・・・・・月夜の夢の如くに・・・・・




モウ一つ秋景を・・・



院展同人 高橋天山ブログ




渓声が静かに響き渡ります・・・・






【秋渓】




院展同人 高橋天山ブログ


 


この深々とした、景は。

なんということでしょう・・・拡大して御覧下さい。


時雨を急ぐ紅葉狩り・・・しぐれをいそぐ・・・もみじ・・がり・・


秋気満ち満ちて、秋雨前線到来、と同時に、紅葉が。

紅葉に肌色、ピンク系、黄土などを加彩していますけれども・・・


こんな色を使って紅葉が描けるとは・・・普通自然の中の紅葉は、肌色もピンクもありませんよね・・・しかし・・・






院展同人 高橋天山ブログ




渓間の紅葉・・・・・・


全身が秋雨に濡れてしまう様な思いがいたしいます・・・・・







院展同人 高橋天山ブログ




秋鹿・・・・・・・・水の冷たさ、ホンノわずか散り行く紅葉・・


   揺らぐ水音・・・・・・・

        牡鹿の息遣いまで聞こえてくるような・・・・・







再来年の、国立近代美術館での菱田春草没後100年記念展が待ち遠しいですね。


めちゃくちゃ暑かった今年の夏も過ぎようとしていますが、一向に代わらぬ暑さ・・・


しかし美術の秋ですから、そろそろ、大いに春草を語り継いでゆきたいと思います。



私は、東京藝術大学油絵科を受験する事4回、つまり、三年も浪人して、結局入れず仕舞いに・・・・入学した私立の美術大学で、日本画に触れたことにより、油絵から転向した経験を持っています。


血気盛んな高校生の時代に日本画に触れられる環境であれば、もっと違う展開が待っていたでありましょうが、当時は日本人ことごとくが、アメリカに心酔し始めていた時期であり、欧州の絵画一辺倒の風潮で、例え、親切な人が、懇切丁寧に、日本画を勧めてくれたとしても、眼中に入らなかったのではないか? と思います。


しかし、初めて触れた日本画の絵の具とその使用法、さらに、乾燥の早さなど・・・・自分の体質と気分に良くあっていることを体験して、一気に日本画熱は高まったのでした。


ぶ厚い菱田春草の画集を、買い求めたのもその表れ・・・・


アルバイトしても絵の具代で消えてしまいいつもピーピーしていたのに、春草の画集は何としても手に入れたかったのでした。



今も、その画集は大切にし、覗く回数も他の画集より遥かに多いでしょう。今尚春草は私の憧れであります。


私も、院展の同人という立場になって、大観先生と共に、命を賭けて院展を産みだされた春草先生達、創立同人の方々の御苦労を推し量る事も出来る様になりました。


天才肌の春草先生に特別惹かれるのは、その【天才さ】、加減に半端のない凄みを感じるからです。


院展の同人ともなれば、それこそ全員が才能のカタマリでありますけれども、春草には、歴代の同人全員でタバになっても敵わない・・・・・それほどの天才であります。


マネも出来ません・・・・



思うに、描こうとしているその心の中の初期の段階がもう既に違うのではないかと思うのです。


迫真のリアリティが、初めから備わっている。


生きておられたら、絵を描く苦労をしたことがありますか?


と質問したいくらいです。




秋らしい逸品をご紹介いたしましょう。





院展同人 高橋天山ブログ


【武蔵野】 明治30年 春草23歳





院展同人 高橋天山ブログ


【秋景】 明治32年制作 春草24歳






院展同人 高橋天山ブログ

さすが、何を描いても上手いが秋の景はことさら見事。

とても二十台の若造が到達できるレベルではありませんね・・・



以前にも申しましたが、菊慈童など、世界最高。人類の遺産と言っても過言ではありません。


モウ、ありえない高さ。


明治大帝の御世であるからでしょうが、このような境地がホントニ同じ人間から、しかも弱冠25歳で達することが出来るものなのか・・・全くのなぞであります








【菊慈童】 明治33年 春草25歳





【六歌仙】 二曲一双


明治31年の作品、ちょうどこの頃、春草は真剣に線について、究明中であり、

線を無くしてしまったら絵はどうなるものか? それはそれは、精魂込めて実験している時期です。


線があるかないかが問題ではなく、線を使うか、使わずに置くか、それは場合によって変えるべきであるし、問題は線を描く力が備わっているかどうかでありますが、春草は、初めから線を描く力を持っており、磨いても来たので、この天才にとっては線は描けて当然という前提から出発して、デハ、無線にしてみようと考えたのであります。


線を使わずに金屏風に人物群像が描けるものか??


やってみたのが、この作品。


伊太利亜の古典フレスコ絵画の頂点とされる作家、ジョットが生涯賭けて到達した境地に春草はただ、一点描くだけで追いついてしまった、のであって、この作品はその証拠作品でもあります。


おわかりでしょうか?

これは、絵画芸術の一つの究極なんであります。



言うまでも無く、一人の十二単の美人は、小野小町その人です。









院展同人 高橋天山ブログ







院展同人 高橋天山ブログ





院展同人 高橋天山ブログ







以前にも少し取り上げましたが、別の角度から語りたい作品がこれです。


【王昭君】 (おうしょうくん)




院展同人 高橋天山ブログ


大きい作品なので、図録からの映像で少し観ずらいですが・・・王昭君とは伝説の美女・・・


漢の後官には宮女が多くいたので、皇帝はその相手をさせる宮女を選ぶため、絵かきに女性達の肖像を描かせました。女性たちは美しく描いてもらい、皇帝の相手ができるように、その絵かきに賄賂を贈りました。しかし、王昭君は自分が美人だと思っていましたし、貧しかったので賄賂を贈りませんでした。それで絵かきはわざと王昭君を醜く描きました。
 そのころ勢力の強かった匈奴に対して、漢の皇帝は王妃を送ることにより講和を結ぼうとしていました。皇帝は絵を見て一番醜い王昭君を選びました。彼女が匈奴王の嫁ぐ時、皇帝に拝謁しました。皇帝ははじめて王昭君の美しさを知り深く後悔しました。
 匈奴の習慣では、匈奴王が亡くなったのちには妻も含めたすべての財産は新王のものになるのですが、王昭君は息子の妻になるのを嫌って自殺してしまいます。





院展同人 高橋天山ブログ


部分




院展同人 高橋天山ブログ


さらに、部分。



この作品は・・・・

春草が線をなくして描いたら新しい表現が生まれる!と確信して描いた美人画です。拡大して見て頂くと、輪郭線を描かない為に、ごく浅い明暗を使い、濃淡を実に上手く駆使して、控えめな立体感を導入していることがわかります。


線を用いれば、線で囲まれたその中、は立体感の必要がなくなるので、それを疑問に思わず、当たり前で、単に習慣でそうしてきた・・・という批判から、無線にしてしまう事を実践したのでした。


江戸時代に本阿弥光悦が、宗達と共に、無線描法を楽々考案し、従来の描き方からすれば随分と革新的な無線による表現が生まれたのでしたが、徹底したものではなく、まあ、道楽とでも言えるくらい気楽な感じで、ちょっとヤラカシテみた・・・・のでした。


春草は、もっと深刻にこの無線描法を徹底する事に情熱を傾け、一時、この絵のように線という絵画の基本中の基本を全く使わず、線と言うものは、ないものとし、しかし、それでいて日本画らしさを失わぬよう、試みているのです。



春草という天才はいつでもそうでした。疑問を感じ、それに真正面から徹底して挑み、納得するまで絶対に妥協しないのです。


疑問というのは、これまでの絵画というものがホントニこれでいいのだろうか?? といった、根源的な疑問です。


疑問に感じる事すらなかなか難しいくらいの事なのですが、いともあっさり、そして、実に深刻に疑問を掲げ、全力でそれを突破する。


早死にするはずですね・・・・・・あまりにも強い意志ですから、体の方がついてゆけなかった?のではないでしょうか。





後年、院展の理事長をなされた、安田靫彦:明治17年(1884)~昭和53年(1978)

東京日本橋の料亭「百尺」の四男として生まれる。小堀鞆音に学び、研究グループ「紫紅会」を結成し、日本画壇に新風を吹き込んだ。大正3年に再興した院展に第1回展から参加し「日食」「王昭君」などの名作を生んだ。正確な時代考証と正しい解釈のもとに、新古典主義といわれる高雅で洗練された歴史画を確立させた。昭和33年に横山大観が逝去した後は、財団法人となった日本美術院の初代理事長に就任し、院展の中心として活躍した。


この安田靫彦先生も、【王昭君】を描いていて、有名な足立美術館に収蔵されていますがそれは・・・




院展同人 高橋天山ブログ


これまた素晴らしい作品です。






 牡丹の季節が終わろうと・・・北国ではこれからですが・・・


 福島県に、日本一の牡丹園があります。


 須賀川の牡丹園がそれ。広大な敷地にそれはそれは自由に

 咲き誇るのですが、去年の咲きが、素晴らしかった!!


 ことしも、今頃から旬ですが・・・


 まだ、行ってません。さすがに去年ほどの事はないと思いますが・・・


 放射能は人間からも発せられていて、がん治療に効果があるように、悪いものでもなく、お塩と同じく適量であれば自然界になくては成らぬ存在。


 イタリア人が日本の大震災で原発に影響があったことを知り・・

 いわく、日本人でもコントロールできないなら俺たちは手を引く・・と。


 日本人の技術力を世界が見つめているのです。羨望と、憧れと、期待を持って。


 


 大天才、菱田春草の牡丹図ごらんいただきましょう。




院展同人 高橋天山ブログ





院展同人 高橋天山ブログ





院展同人 高橋天山ブログ






院展同人 高橋天山ブログ





院展同人 高橋天山ブログ




 それは、素晴らしい・・・・・





花曇が続き、少しも温かくならないのに・・・・

葉桜となってしまいました。


八重の牡丹桜が、盛りを迎えたいのに温かくならないので困っているみたいですね。


天譴災異のない、例年ならば、日中は汗ばむ日和も・・・・

次々に咲きそろう花々で溢れかえっている頃です。


【惜春】



院展同人 高橋天山ブログ


春の字が雅号にある菱田春草。

その作風はこの名の通り、春の芽吹きのしなやかな青草・・・


およそ、惜春と題された絵はそれこそ無数にあると思われますが、この作が第一等!!  しかも、ダントツブッチギリの一等であります。




水鳥も春を惜しむか朧月





院展同人 高橋天山ブログ





春宵の気、ここにキワマル・・・・・・







 本来なら、桜の開花時期。

 北上するさくら前線の話題。


 しかし、今年は、梅の見頃が続いています。

 ウグイスも嬉しそう??


 夜の梅香がどこからともナク、漂ってきたり、

 春雨にもかかわらず、強い梅の香りに驚いたり、


 朝日を浴びて震える寒気の中をものともせず、開花するその律儀さや、

 百花に先駆けていの一番に花開く梅花を、うっとりと眺める時間が長くて・・

 トク?


 



院展同人 高橋天山ブログ

 【白猫】




 猫を描く、引き立て役に、梅を持ってきています。

 それにしても、猫の斑が・・・・変わってますね。

 頭のてっぺんと、尻尾の先が黒いだけで、あとは、白き猫。です。


 こうはなかなか描けませんよ。春草描くところの猫は、人気がありますが、

 どれも、並々ならぬ不思議な猫ばかり・・・・


 梅と猫とが上手くかみ合うのが、そもそも不思議です。






院展同人 高橋天山ブログ


 【月四題のうち 冬】


 画題は冬とありますが、イワユル立春後の冴え返る頃。

 折角咲いた紅梅に、あわれ、、、雪が積もる・・・・。


 美しい構図です。誰でもやりそうで、なかなか、こうは行きません。

 凡庸なる、構成でも、ちょっと珍奇な構成でも、そのどちらでもこなす

 春草の真骨頂をご覧頂く為に並べてみました。