松林図屏風。 | 日本画いろは川村愛

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もうひと月も前になる


宇島で不意に出くわした鉛色の海が美しかった

懐かしいカクイわたの看板

赤い立葵

田植え前の田んぼには満々と泥水が溜まっている

別府湾から煙に紛れる大分の工場群

水平線が明るくクレーンが霞む

湯布院を貫く高速道路は通行止

この大雨の中をくぐって


『松林図屏風』の前に


林間に靄が立ちのぼり

徐々に幹が姿を現す


どこから描き始めたのだろうか

先に淡墨で靄と足元の松葉を描き

現れてくる松を何度も描き重ねて

濃墨で茂る松の枝を描く

紙は藁が混ざる粗いもの

これは素描?

刻一刻と変化する松林に立っているような臨場感


しかし
松の数は七五三のリズムをとり

屏風の山と谷に合わせ配置

奥行きを感じさせる


裏打ちが右隻の端だけずれているから
下図ではないかとも言われているが
裏打ちのくいさきの線で松の首を切らないためではないか

そして図録ではわからなかった
屏風の縁の朱塗
墨だけで描かれた松が目の錯覚で緑に見える

その緻密な計算

それを感じさせないさりげなさ

書のように究極の一筆で描かれた潔さ

日本の湿潤で美しい風景を描いた国宝に相応しい佇まい


帰路
大分駅に戻ると作られた窓が屏風のように見える

雨は弱まり遠く霞む山々が再び水墨の風景を思い出させた

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梅雨明けを前に