チャイナシンドロームという言葉がある。
ジェーンフォンダとマイケルダグラスが主演した映画のタイトルである。
原子力発電所が杜撰な管理により原発事故を生じさせてしまい、それにより炉心が溶解するしてしまう。
それは大地をも溶かして、最後にはアメリカからみて地球の裏側である中国にまで達する内容であり、その状況を踏まえ皮肉を込めた意味である。
この映画のアメリカでの公開は、1979年3月16日であった。なんの因果か、偶然にもその12日後に、アメリカではスリーマイル島での原発事故が生じてしまう。
それから、7年後1986年4月26日に、また大きな事故が起こる。
そう、チェルノブイリである。
1986年4月に中学生になった僕は、4月8日に岡田有希子が自殺し、衝撃を受け、さらにチェルノブイリという展開であった。
誰に聞いたか、多感な中学生達は、いつからそんなに化学に詳しくなったのか、にわか仕込みの知識で、その目に見えない脅威は、ヨーロッパ全土を覆い尽くし、その地域で獲れる小麦は食べてはいけない…挙句、スパゲティなどは口にしてはならぬ。くらいのあることないこと話をしていた…
今更ながら、チェルノブイリがすごい…
海外ドラマの内容である。
史実を忠実に再現したフィクションであると思う。
311の福島が酷いと言うが…
レベルが違う…ケタが違い過ぎる…
それは、人に対する扱いがである。
原子炉建屋が、爆破で吹き飛び、炉心にしか使われていないはずの、真っ黒な黒鉛が飛び散っている、そんな現場の火を消そうと何も知らない消防士達が必死に消火作業を行うのである…
格も酷い内容かと唖然とする…
放射線に対する防御服も直用せずに、魚市場の従業員さんが着用するようなゴム製のエプロンと長靴でチャイナシンドロームに立ち向かうのである…
想像を、絶する内容である…
時に、科学技術の発展は、僕たちの生活をとにかく豊かにしてくれている。
そして、その恩恵を受け、僕たちは生活をしている。
僕は、大学で理科系を専攻していたので、科学の進歩がいかに人間にとって素晴らしい恩恵を与えてきたのかを、理解しているつもりである。
例えば、ハーバーボッシュ法として知られる空中窒素固定法は、空気中から窒素を抽出する方法でだったりする。
後に、窒素を空中から無限に生み出せるこの方法は、農業の手法すら変える技術で、ノーベル賞まで受賞している。
この方法で、肥料である窒素が、空気から無限に作り出すことができるのである。
ところで、空中から窒素を抽出しようとフリッツハーバー博士とボッシュ博士は、なぜ考えたのであろうか?
それは、火薬を作るためにだった。
第一次世界大戦時に、彼らがいたドイツは、
物資の供給を止められており、火薬に必要な窒素の塊である硝石が輸入できない状況であった。
それを打開したのが、ハーバーボッシュ法であるのだ。
科学技術というのは、使い方次第で、よくもなるし、悪くもなる。
そして、時代時代において考えかたも異なってくる。
それは、原子力も当てはまるものだと、僕は思う。
例えば、まだ鉄道が蒸気機関車で、石炭を燃やして物を動かしていた時代から見れば、原子力は夢のような科学技術であったんだと思う。
事故さえ発生しなければ、原則的には、大気も汚さずに、燃料自体も尽きることがないと考えられていた…
誤解されないように言うと、僕らの国は、資源が乏しい。そこを、なんとか科学の力を使って、国民の生活を豊かにしようとした結果、もっともベストな物が、原子力であったんだと思う。
僕らの先輩がコンピュータすらない時代に必死に考えたのだ。
だから、当時は、ベストであったんだと思う。
その恩恵により発生してしまう問題点…つまり放射線、その副産物は、人間の設計図をめちゃくちゃに破壊してしまうのである…
つまり科学技術の恩恵を預かるという事は、諸刃の剣である。
良い面もあれば、悪い面もあるということを、きちんと理解して付き合っていく必要があるのだと思う。
僕たちは、科学技術の恩恵に預かる際には、そのことをきちんと認識しておかなければならない。
そして、先人達の選択が、仮に間違いだったとしても、それを踏まえて歴史を考えていくのが、後人の責務であるんだろうと、僕は考えている…