貴女が神奈川県選挙区から社会党の候補者として参議院議員に立候補した1986年、正直申しますが、私は貴女に投票してしまいました。まだガキで政治のことなどほとんど知らず、「大学の先輩」「女性弁護士」という、ごく単純な理由からでした。当時、社会党は「反自民の象徴」として人気があり、自民党に入れるのはいけないことだと思っていたのもあります。あなたは「38歳、働き盛りの弁護士」という触れ込みで当選なさいました。その後、社民党を離脱し、民主党へ移られたのですね。
貴女は現在法務大臣ですから、入国管理局の最高責任者でもあります。外国人が日本に住むには、正当な在留許可証(ビザ)が必要なことなど、私が言うまでもなくご存知だと思います。暖かく豊かで安全で国民が優秀、経済もまだまだ捨てたものではない日本という国が、貧しい外国人にとって、どれほど羨望の国に見えるか、あなたは理解しているのでしょうか。アジアスポーツ大会などが日本で開かれると、いくつかの国の選手達が集団で脱走して帰国しないことなどザラです。アメリカをめざして、命がけでメキシコ国境をわたるヒスパニックの人たちと共通することです。
私の夫はアメリカ人ですが、入国する前、サンフランシスコの領事館で、複数年の配偶者ビザを取って来日しました。さて、成田に着いて上陸しようとしましたら、入国管理局の女性が、彼のパスポートにべたっと「短期滞在90日」の、ビザなし観光客と同じスタンプを押してしまいました。私は仰天して抗議をしましたが、彼女はさらっと「入管に行って在留ビザを申請して下さい」と言いました。何のために彼がサンフランシスコでビザを取ったのか、皆目わかりませんでした。その後、婚姻届を出し、その足で横浜の入国管理局に行き、日本人配偶者としての在留資格1年を得ました。翌年は3年のビザを申請しましたが、また1年でした。そしてその翌年になってやっと3年のビザが下り、今日まで3年ごとに更新しております。入国管理局に行くのは、どの外国人にとってもいやなものです。それに、費用もかかります。でも、日本国籍を持っていない以上、それは義務として、順法精神に基づいて必ずおこなっております。
貴女が、弁護士時代、外国人の在留関係の事件を扱ったことがあるかは不明ですが、「森川キャサリーン事件」という、1992年11月16日の最高裁の判決のことはどこかで聞かれたことがありますか。いろいろな事情がこみ入った事件ではありますが、エッセンスをつまんで言うと、
「日本国は外国人を受け入れる義務はなく、それはもっぱら日本国政府の裁量による」
というものです。当時要求されていた、外国人登録証への「指紋押捺」を拒否した、ということが入国管理局にネガティブな材料を与えたことは事実ですが、森川キャサリーンのように、平穏に日本人男性の妻として暮らす外国人であっても、そのように判示され、それを覆す最高裁判例はいまだ出されておりません。貴女は弁護士ですから、私などが言うことではありませんが、最高裁の判例は日本の司法の指針であり、下級審も原則としてそれに従い、最高裁の判決に反する判決を下すことはまずありません。それによって判例が構築されて日本の司法が運用されていくわけです。ですが、貴女は、この判決の「日本国政府の裁量による」という部分を完全に逆に解釈して楽しんでおられるようですね。貴女は、最高裁を何だと思っておられるのでしょうか。最高裁の国外退去の決定を覆すのがよほど快感のご様子ですね。不法滞在者のどこがそんなにお好きですか。貴女の在留資格決定を見ていると、不法入国、不法滞在であっても、長年入管の目を潜り抜けて潜伏し、子供を産んで地元の学校に通わせ、「日本語しか話せない」などとうそぶかせれば、ことの違法性など一切無視して、「よしよし」と判子を押してしまっている傾向が明らかにうかがえます。両親とも外国人で、子供が「日本語しか話せない」訳はありません。それに、彼らの生活ぶりを善良だなどと評価しておられるのかもしれませんが、善良なのは当たり前です。素行が悪かったりしたら強制送還なのを彼らは百も承知しているからです。「最高裁で負けても千葉景子がある」などという途方もない期待を不法滞在者たちに抱かせる法務大臣で、そんなにご満足ですか。法務大臣はむしろ積極的に不法滞在者たちを取り締まらなければならない立場にあるにもかかわらず、その怠慢を棚にあげるどころか、人のいいことに、鞭の代わりに飴まで与えています。貴女のズレた仕事ぶりには、あきれて物も言えません。
最高裁の決定に反してまで不法滞在者をかばう行為が、いやな思いをして真面目にビザを取っている私の夫を含めた正規の外国人居住者達を、どれほど怒らせているのか、少しでも考えてください。
あなたの在任中、死刑が執行される期待は持たないようにします。しかし、不法滞在者たちへの大甘な処遇には、断固抗議します。日本国は、こんなに入国管理が雑で甘くて法務大臣までが反日分子だという情報を、テロリストたちがどれほどおいしい思いで聞いているかということも、少しは頭の片隅で考えてください。
なお、最後に、あなたが法務大臣でいる限り、民主党内閣の支持率の低下材料になりこそすれ、上昇の材料には断じてならないことを付言いたします。