自然のしくみは、驚愕するほど素晴らしく、寒くなってくると、白菜、ねぎ、大根などが甘みを増し、魚も脂肪を蓄えて、鍋の材料としてこの上ない選手たちがそろう。本当に季節の妙である。
本日は、シンガポール支社から、ニュージーランド人の某氏が来て、みんなで彼を囲んでランチを取った。場所はちょっとリッチな和食店である。
彼は和食に疎いらしく、スシくらいしか知らなかった。スキヤキも聞いたことがあるかどうか、という程度。たまたま「すき焼き定食」があったので、彼はそれを注文してみた。
小さい鍋に、すき焼きが盛られ、生卵、茶碗蒸し、刺身など、とりどりのおかずがお盆の上に乗ってきた。見るもあざやかな盛り付け方である。
しかし、彼はまず「この生卵はどうするの?」と聞いた。溶いて牛肉につけるのだと説明すると、
「生卵は嫌い」
と言って、よけてしまった。
すき焼きは結局彼の口に合わなかったらしく、すごくまずそうに食べていてもったいなかった。ご飯は、全然食べなかった。我々日本人からみると「ご飯なしにおかずだけを食べている図」なのだが。彼にはこれでいいらしい。
茶碗蒸しのフタをあけたら、上に、季節を先取りして、タラの「白子」が乗っていた。
もう白子の季節になったんだなあ・・・、と、思わず生唾が出そうになった。私は白子に目がない。冬の鍋物の季節になると、こんな美味なものが味わえるなんて、日本人でよかったあ~、と思った。すき焼き定食以外の物を頼んだその他大勢は、彼の白子のゆくえをじっと見た。
「これは何?」
とNZの彼は聞いた。「得体の知れない、薄気味悪い物体だ」と思っていることが表情からはっきり伺えた。
しらこ・・・・なんと訳したら良いのか、みんな言葉に詰まってしまったが、私はとりあえず、
「オスのタラの精子の入った袋です(male cod's sperm sack)」
と、知っている限りの単語を並べたら、彼は
「げ~!!」
という表情に変わった。ちょっと青ざめていた(説明しなければよかった。すまん)。
彼は当然、一口も食べようとしなかったので、中の一人が、
「これ食べてもいいですか?」
といって、白子だけ頂戴して食べてしまった。Good Job!