この9月、シアトルに行ったとき、家族経営や零細経営の小レストランの店頭に、「配達します」という張り紙が多くなったのに気がついた。
「どうして?ガソリンも高いのに。みんなチップを払いたくないから配達を取るようになったの?」
と夫に聞くと、
「いや、配達を頼んだってチップは払うよ」
とのこと(お恥ずかしい話だが、私はいまだにこの「チップ」という制度になじめず、外国に行っても一人でうまく払えない)。
「じゃあ、どうして?」
と聞くと、答えは「ビール」だという。
なるほど、そんな単純なことに気がつかなかった。
外食でビールを頼むと、高い。おちおち安心して飲めない。
ビールなら、店で買ってきて冷やしておけば、定価で、好きなだけ家で飲める。あとは、それとともに食べる食事を取り寄せればいいだけの話であった。
配達エリアを限り、かつ、1配達につきXXドル以上、などと最低金額を設定してはいるものの、家族経営が多い小レストランには、配達を頼むのも、コストがかかって大変だろう。しかし、そうでないと、来店する客だけでは、売上が確保しにくくなっているらしい。これはまだ大手金融機関が破綻しはじめる直前の話だったから、今であればなおさら苦しくなっているであろう。
ビールと戦い、そして今や金融危機の影響とも戦う小レストランたち。この世に楽な仕事はないけれど、経営を維持するのも生半可ではないだろう。私らお気に入りの数軒が、次回行くときにもまだ存続してくれていることを祈る思いだ。