アメリカ本社から、
「これをグローバル共通のフォーマットとして使用すること」
という指示とともに契約書(英文)のひながたが送られてくると、いつも調整が必要である。

まず、彼らは全くメートル法に関係のない世界で生きているので、A4とかB5といった用紙の存在を知らない。あちらから来ると、「レターサイズ」という、ちょっと横広、縦に短い用紙に作成されて来るので、受け取る支社は、まずA4に変換しなければならない。余白の指定も「上は○インチプラス3分の2インチあけて」などとインチで表示してくるので、いちいち電卓を叩かないとわからないのだが、私はイラつくので、もうテキトーに済ませている。ちなみに、アメリカ人は、分数が好きで少数がキライなので、「2.5インチ」などとは言わない。「2と1/2インチ」と書く。
もっと自己中であきれるのが、私の会社の本社だけなのかもしれないのだが、国際契約にもかかわらず、自国の住所の最後に「U.S.A.」を全くつけないのである。アメリカがイコール世界の中心なので、いちいち付ける必要もない、とでも思い込んでいるのであろうか。
契約書なので、当事者(日本でいう「甲」「乙」)の表記のうち、弊社の本社の住所表記欄は、
「ABC Corporation, 1234 John Street, San Francisco, CA 94321」
と、郵便番号で終わったまま、世界中の顧客と契約を締結している。私はもう、フォーマットを修正する時点で、郵便番号のあとにU.S.A.を付けてしまうけど、米国本社で締結した国際契約は、お客様がロシア企業であろうとエジプト企業であろうとタイ企業であろうと、お客様の住所欄にはちゃんと「Russia」「Egypt」「Thailand」と国名を書くくせに、自分達の住所にU.S.A.を付けたのを、見たことがない。
もう1つ、気が利かないんだなあ、と思う点がある。
「お問い合わせの際には、こちらまでお電話をください」
という条項に、米国本社の担当部署の電話番号が書いてあるのはいいのだが、書いてあるのは、トールフリーの番号なのである。ったく、トールフリーがアメリカ国外から通じるわけはないだろうに。私は過去に1、2度、「トールフリーは米国外から通じませんので、有料電話の番号に書き換えますから、その番号を教えてください」とメールを打ったことがあるが、フォーマットが改定され、これを使えと配ってくるたびに、相変わらずトールフリーの番号が表示されている。米国外の支社に配信するフォーマットなんだから、最初から、有料の電話番号を書いておけばいいようなものなのに、彼らは全然学習しない。外国では違うんだ、という配慮のかけらもない、というか、そもそも、そういう配慮が必要なんだというところに思考が及ばないらしい。こういうところ、やっぱり日本人はこまやかで優れていると、しみじみ思う。