共和党の副大統領候補だったペイリンさんは、アフリカを、国の名前だったと思っていた、という。マケイン陣営はこれに驚きあきれたものの、選挙中は伏せられていたという。いかにも「外国オンチ」のアメリカらしい話だ。ブッシュ現大統領だって、地理的知識に関しては彼女と大差ないだろうと私は思っている。
共和党支持者である夫にこのペイリンの「おバカ話」を聞くと、
「負けが明白になってくると、人間、お互いの非を責めたり、失策の責任をなすりつける相手を探したりするものだ。だから、僕はこういう話は真に受けないよ。それに、ペイリン自身は知的な女性だと思う」
と、あくまで彼女をかばった。
1984年、民主党でフェラーロという女性議員を副大統領候補に擁立したときのモンデール陣営は、見ていて悲惨だった。戦う相手が、絶大な人気を誇ったレーガン大統領だったから、民主党は、誰を候補者に擁立しても、勝てる見込みはみじんもなかった選挙である。大敗を喫したのち、フェラーロは、民主党からも総すかん、四面楚歌状態になった。ペイリンは、今後、彼女と似たような取扱いを受けまいか。これで、民主、共和両党とも、女性副大統領を擁立した大統領選挙に失敗したことで、今後、女性副大統領が擁立される見込みがなくなってきたように思う。
「外国オンチのアメリカ」という話に戻すと、アメリカ人の中でパスポートを持っている人口は、わずか14%であるという。彼らにとって、アメリカが世界のすべてであって、アメリカ以外の地域の存在には、およそ興味も関心も持っていない。国土が広大だから無理もないといえば無理もないが、ハワイに行くのが「海外旅行」にあたる、という。TVのニュースはまずアメリカのこと、新聞は、日本と違って「全国紙」というものがないから、まず地元の記事から持ってくる。私らがシアトルに行っている間に福田総理が突然辞意を表明したけれど、そんな記事など、地元紙には見つけるのが困難だった。
レーガン大統領の逸話だが、彼が初めて南米を訪問したとき、記者団にこう発言したという。
「諸君は驚くだろうが、むこうは全部別々の国なんだよ」
なんだ、ペイリンさんがアフリカを国だと思っていたのと全然変わらないではないか。普通のアメリカ人の外国に対する知識なんて、そんな程度だ。