8年ぶりに民主党が政権を奪還した米国。
夫が支持する共和党は、金持ち寄り、大企業寄り、白人寄り、の印象が否めない。
また、私が嫌悪する全米ライフル協会(白人しか会員になれないらしい)には、この党の保守派政治家の会員が多いらしい。
これに反し、民主党は、どちらかといえば、移民や貧困層、非白人に支持が多いようだ。ビル・クリントンは白人であったけれど、黒人層に人気があり、彼のNYオフィスも、黒人街に置かれている。

最近、穴のあくほど読み返した本が、岩波新書のベストセラー、「ルポ 貧困大国アメリカ」である。
中でも、私が最も食い入るように読んだのは、かの国では、あまりの高額のため医療保険に加入できない人がごまんといるばかりではなく、骨折1つ、盲腸1つで「破産」に至るほどの高額な請求書が平気で来るという事実だった。運よく、月々1000ドルもする掛け金をかけながら、保険に入れたとしても、保険会社は、やれこの薬より安い薬を使えばよかったのなんのとケチをつけ、懸命に払わないようにするという。
そして、この国には、日本のように、区役所に行けば加入できるような公的な健康保険制度は存在しない。私は結婚当初、夫のいうアメリカの医療保険制度のことがなかなか理解できずに苦しんだのだが、要は、民間ベースの、火災保険とか、自動車損害保険のようなイメージで、火災や事故を起こす人には保険料が高くなったりするものだと解することにした。しかも、許せないのは、心臓病など、重度の病気から回復しても、そういう社員がいると、保険会社から保険料の増額を迫られるため、復職すら拒否されるほどだという。アメリカとは、病気1つ、けが1つしたら、破産しかねない国なのだ。
人の医療が、命が、民間の資本主義ベースにゆだねられて良いわけはない。
そして、医療保険会社は、経営を黒字にし、株主に還元するばかりではなく、政治献金も欠かさないようだ。マケインが、公的医療保険制度の導入を問われたとき、これを否定し、
「減税でまなかえばやっていける」
などと答弁したのを聞いた瞬間、私は
「あ、このひと、だめだな。保険会社から政治献金がなくなるのをおそれているな」
と思った。
アメリカの医療保険制度については、まだまだ書きたいことはあるのだが、夫は、日本に来たとき、日本の医療費があまりに安いのに感動していた。また、健康保険証があれば、どこでも好きな病院に行けて、どこでも3割(当時は1割だったが)支払えば済むことにも、もっともっと感動していた。
「アメリカの健康保険は、ちがうの?」
と聞くと、あちらでは、行ける病院が契約で決まっていて、それ以外は保険が効かないのだといった。なんという不器用な制度だろう。急な高熱や歯痛にうなされたって、近くのクリニックに飛び込むことすらできない。

そういえば、以前勤めていたアメリカ企業の日本支社に、日本の健康保険制度に惚れこんで、これがゆえに夫婦そろって日本に済み続けていたアメリカ人社員がいた。彼女は、日本で出産したので、健康保険から出産一時金として45万円ももらい、さらに腰をぬかし、ますます日本に済み続けることを決心した。子供を産んでカネまでくれる国なんて、アメリカ人には天国に思えるだろう。アメリカでは、出産で1晩でも入院すると、4000~8000ドルも取られるので、日帰り出産が激増している、と、上記の本に書いてあったっけ。