荒野の墓標 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

THE DIRTY COLORS

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 目を凝らす、ぼんやりと十字が見える、砂混じりの風が吹く、するとそれは滲んでシルエットになる、そしてその十字は地に対して直立はしていない、徐々に傾きつつある。
 ふたりにはそれが見るたびに傾斜を強めているように感じられた、明日には根元から折れ、倒壊しているのではないかと思う。
 地はひび割れ、雨の降らない荒野のようだ、だが、この広大な砂漠はその下に海がある。長い年月と莫大な予算によって建造された埋め立て地、かつてスラムと化した人工島。現在はその中央に墓標のみが静かに眠っている。

「来ていたのか」
「お前こそ……いつ戻った? ジタンと一緒じゃなかったのか」
 へへへ、細長い人差し指が鼻の下をこする、片側の口角を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべる。
「久しぶりの帰国だ、あんなクルーザーのシケた貧乏航海は勘弁だよ、カネ持ちだらけの豪華客船に乗り込ませてもらったよ」
「相変わらずだな」
 ヒトはそう変わらないんだ、簡単に変わるヤツは信用できない。
「お前こそ、こんなところにいていいのか」
 ガゼルは振り向く、そこには防弾ガラスを装備した重厚なボルボが見えた。
「上には視察だと言っている、お前と会っているこたがバレたらことだろうな」
 ガゼルはかつての暴動の主犯だ、だが、彼の所在を掴めるほどの情報力は政府にはない。
「ただ、現政権は臨時政府だ、単なるお飾りさ。事実上の実効支配はニホン人ではない」
「それはずっと昔からだな」
「あのころから変わらない」
 ふたりはタバコを口にする、満足そうに吸い込んでゆく。生まれ育った大地が眼前に広がる、彼らが生きた痕跡はもう何もない。
「また会おう」
 ディータは背を向ける、踵が規則正しく鳴る、それを聞きながらガゼルは言った。
「トーキョーでな」
 向け合った背が離れてゆく。
 この荒涼たる地に立つ墓標、そこには多くの名が刻まれている。
 そのなかには彼らに関わった多くの名がいまも砂の風に吹かれている。


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the sunshine underground/〝after life〟

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the sunshine underground(総集編)


performed by billy.