
断崖に建つ、街の名前はディッキーズ、
無造作な防波壁、切り棄てられた岩を重ねただけの、
静謐の海に声なく佇む、浅瀬はないから泳げない、
通り過ぎられるだけの街、穴ぐらのような住居が並ぶ、
戦時の爆撃避けるための壕、そしてそこに生きる人々、
いくつかのモーテルと、オルゴールをつくる者、
調音師のディックがいたから街の名前はディッキーズ、
彼はもうこの世にいない、遺したのは220のオルゴール、
そして彼の子供たち、そしてその子供たち、
ひとりはライラ、高台の自宅に帰らず、
最低部のモーテル暮らし、
見上げても空は見えない、見下ろせば不格好に削られた、
波が打つ岩ばかり、
星の意の名前持つ、有り余る時を無為に費やす、
何をしてても退屈だった、
星を数えた子供のころは、今よりずっと暇だった、
そう思う自分が嫌い、正面からは見せない笑顔、
振り向くときだけ少しの笑顔、
誰かに呼ばれることだけは、
いくつになっても変わらず好きで、
古く錆びたオルゴールをひとつずつ、
ひとつずつを海に投げては、
無意味さ感じるそのときに、
雲の切れ間の夜の宇宙、
星と星が光を重ね合わせてた、


