何も言わず、その視線がどこに向けられているのか分からなかった。
僕はただふたりの間にある距離を無言で計る。
沈黙はあたりをより濃く強く空気を支配する。
無言。
見えない刺が毛穴に侵入してくるような、ある種類の痛みさえも伴って、人工の闇の深みをさらに強くする。
より濃く、より深く。
“ね、ほら、見ないほうが良かったでしょう?”
正確にはまだ彼の姿が見えたわけではない。
滞る空間に不穏な気配を感じるだけだ。
“……いや……”
そんなことはない、そう言えれば良かった。
言うべきだった。
けれど、僕は口にすべき言葉を喉の奥に置き忘れたまま、闇に呼吸する彼の姿をただ感じ続けるほかなかった。
眼球は暗闇さえも凌駕する。ヒトは深海魚ではない。視覚が間近を捉えようと何度も何度も収縮を繰り返す。

カールした髪には数百にも及ぶ蛇が宿っていた。
彼の意思とは無関係に伸び、縮み、それぞれがそれぞれの意思を持つかのように自在に動き、割れた先端からは赤い舌を這わせ、獲物を追う捕食者そのものとして、彼の頭には幾束の蛇が棲息していた。
青白く痩せた本人からさらに命を削り取るように闊達に生きる、その蛇の群れ。異形の姿。
“ほら、見ないほうが良かったんだ、僕は何度も君がいま浮かべてるような視線のなかで生きてきたんだ。僕はヒトだけど、ヒトのつもりでいるけれど、君とは違う。だからずっと隠れてるんだ”
to be next “the snake head interviews -part 3-”