「彷徨う風と航海へ」
航海決めた君の旗をゆらす潮風、
帆先に休むツバメは慌てた、目覚める前に船がゆく、
酔い醒める、出航前の海を眺めた一行が、
最初に見る明けの太陽、そして凪など知らず巻きつく嵐、
泡暗き、柱を立てて螺旋の塔は、
生き物さながら意識さえも持つように、
荒れ海、好むサーファーたちを巻き上げた、
まだ見ぬ世界は遠く遥かで、
シケるばかりの夜を楽しむ、握りしめる海図にはない、
まだ未開の大地を探す、
何が在るのか、まだ見ぬ想いすべてがあって、
何が待つのか、きっと想いもがけない未知ばかり、
君は旅に生まれた子供、獣混じりの種族の子供、
夜明けにはトランペットを鳴らす、
気分次第さ、風にその身まかせるもいい、
〝明日がなんだ、そんなの知りたいとなんて思わない、
未来なんかありゃしないんだ、今日はまず笑ってられる、
その瞬間、それがすべてだ、
退屈しながら生きるくらい愚かしいことはないって分かってんだろ？〟
航海始めた君の旗が嵐になびく、
軋む竜骨、帆と背骨、
焦る潮風、頬に冷たく揺れる耳たぶ、麻紐に結うターコイズ、
汚れにまみれた鬱屈さえ横たわる、
かたちのなさに怯えるくらい不快はない、
爆ぜ海進む、君は生まれながらの旅の種族、
噴き上ぐ波は錆びた鉄、
掲げたナイフは似せた三日月、
誰も彼も呆れながら憧れる、
誰も知らない未踏の航路へ解放者は舵をとる、
【注】
このピストルはおもちゃです。……100均のおもちゃで喜べてしまう、とっくに大人なはずの僕……。
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