ニオイも不思議に澄んできた、
空ははるか遠いのか、思うよりも近いのか、
どちらでもいい、
この世界にある絶望を海だとしたら、
誰もが孤独に泳ぎ疲れた。
“俺は狂ってなんかない”、そう叫ぶは厚化粧の老紳士、
欠伸まじりに眺める少年、背中に羽根が生えていた。
氷よりも冷えた鉄螺旋、休むに飽きて飛んでった、たぶん、月に帰るんだろう、影を薄く残してる。
空は今日も水色で、そこに滲んだ血が混ざる。
棄てた者と棄てられた者、重ね合わせる呼吸と体温。
路上に熱がたまってる、冷めないまんま上がればいい、獣たちも夜を迎える。
風の向きは変わってきてる、ニオイも不思議に澄んできた。
空ははるか遠いのか、思うよりも近いのか、
どちらでもいい、
この世界にある絶望を海だとしたら、
誰もが孤独に泳ぎ疲れた。
夜にもがいて、朝に不快で、世界の終わりを待っている、終わる世界が人々包む。
背中に羽根のある少年、遠く地球を眺め回して、眠い目こすり、見飽きたふりして飛んでった、
月の向こうに帰るんだろう、下弦のそいつに跨がりながら、光る八重歯を磨いてるだろう。
