俺はそんな名前じゃない、妙な名前をつけてくれるな。
ミントと呼ばれたイヌはしかめっつらで、笑顔のヒトを見上げてる。
その手の食い物よこしなよ、シッポくらいは振ってやるから。
名前なんか忘れたよ、涙が乾いたあとのこと、何もかも忘れてやろうと決めたんだ、
俺にいるもの、ひとつもないって気づいたからさ。だけどさ、食い物だけは早くくれ、生きてんだ、生きているから腹は減る。
ずぶ濡れて、ひた歩いて路地裏抜けて、二人の部屋から抜け出した。
本当の名をくれた二人はたぶん、もう、生きちゃいない。
あのとき死んでも良かったと、いまだ思っているけれど、俺に銃は向けられなかった、見上げる空に二人はいない。
俺の名はザジ、ミントなんかじゃない。
だけど、まあいいやって思う。
生きてゆくには呼び名がいるし、少しくらいは心だって取り戻したい。
ミントでもまあいいや、
俺の名はザジ、生まれ変わるんだったら、やっぱりザジを名乗るけど、
今はミント、それでいい。