風に舞う -04/13 night- | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

風車のある街に生まれた子供はその巨大な羽根が回転しているのを見たことがない

3枚はどこかのクルマのエンブレムのように ただそこに立つだけだった
もがき 足掻き 吐き出しながら 喚きながらも
子供は少年になった

風車のある街に育った彼は その羽根が風を飲みこみ回転する姿を思い描きながら生きていた 凪いだ海は果てから潮風を鳴らしたが 壊れた時計12時40分20秒を指したままびくともしなかった
舌を出し 漂い 悪態をつきながら
やがて少年は青年になる

風車の群れは街の始まりの海岸から街の終わりの丘まで続き 立ち並ぶそれは旅人の目を引きはしたが 一回転すらしないまま 錆びれて老いさえ漂わせていた
抗い 汚れ 変わりもせずに涙をしたり
そして彼は大人になった

風車のいくつかは撤去され 羽根を外されて単なる鉄棒になるものもあった 群れではなくなりつつあった

潰れ、渇き、アスファルトで目覚めたり
焦がれ、ちぎれ、無駄に吠え立て
少年はすでに青年期を過ぎつつあったが 彼は大人になりきれず
誰にも届かない声を 聞き入れられない叫びを その体に溜めながら
毒を吸い 毒を飲み 這いつくばりながら
その街に生き 孤独に老いていった

突き刺され 撃ち抜かれ 神を恐れず
異端として 無法として 臆病かかえながら
弱虫を意気地のなさを 悲しみさえも引きずりながら

男は実際の年齢よりもはるか早く老いていた 老いではなく生きる意思を失っていた

無邪気に光を求めたり 怠惰に闇を貪ったり
彷徨い続け 何一つ手に出来ず 何を手にしようともせずに
やがて風車は一つだけになり それでも回りはしなかった

死を決めた男は自らを風葬にすることを決め 死を決めた日の前の夜に生家を焼き払い そのなかで眠った
男は灰になり 牧師によってその灰は最後に残った風車の下で撒かれた

海は凪ぎ 風はなかった 灰は一瞬だけ宙を舞い こぼれ落ちながら水平へ流れた

羽根は男のために力を振り絞り 軋む体を奮わせて 一周に満たない程度だけ回って 残る一枚羽根を落とした

風に、舞う
風に、舞う