ユノ目線
もうあんな昔の事はすっかり忘れてるよ、俺。
でも、「りんごとミカン」って単語でなんとか思い出した、けど、確かに大変だったから「思い出した。」なんて言わない。
あんなの思い出したなんて言ったら、また騒ぐからな…
あの日は、俺達5人の唯一のラジオの冠番組Bigstationの収録日だった。
裏話言うと、だいたい収録は纏め録りだ。当たり前の話かな。
その問題の回はジェジュン、ジュンス、ユチョンでの録りで、俺とチャンミンは次の回でそれが終わるまで待機。
チャンミンはスタジオのソファーで爆睡してて、俺はスタジオの外でマネージャーと雑談をしていた。
もうそろそろ前の収録が終わるかなー、と思い扉を開けて中に入ったら…
「しーしー!ユノに聞こえちゃうから!」
「すいません。」
「後でもう一回しましょう。」
「と、言うことで…」
なんだ?あの3人、俺をネタにしてんのか?
収録しているブース内の声が俺達が借りてるスタジオ内に流れているんだが、いきなり俺の名前が出てビックリする。
中の3人を見るとジェジュンはなんだかブスッとした顔、ジュンスはそわそわ、ユチョンはにやにや…
あ…もうこれだけで嫌な予感。
あの表情を見ただけで分かる。
ジェジュンを筆頭に、俺の悪口言ってやがる。
悪口って言っても、陰湿なものじゃないぞ?
ま、あれだ…
ジェジュンの俺に対する愚痴ってとこだな。
ったく、いくら俺とジェジュンのカップル…
まぁ、なんだ。所謂ユンジェがだな。
商業用カップルで公認されてるからって…
本当に付き合ってるからあんまり表立って喋って欲しくないのが正直な所。
ともかく…
俺関係の話して俺の知らない所でジェジュンの機嫌が悪くなったようだ。
…この場合、俺、悪くないよなぁ?
収録が終わり、3人がブースから出てきた。
すると、ニヤニヤ顔のユチョンが俺に近付いてきた。
「ねー、ヒョン。今の収録でさー東方心理やったんだけどー。ちょっと面白かったからヒョンもやってみてよ。」
「…それやって、なんかいい事あるのか?」
「さぁ?どうかな?」
ユチョンに隠れてジェジュンとジュンスがコソコソ聞き耳立ててるの分かってるからこそ言う。
「じゃ、やらない。」
「「っええええっ!?」」
「ええ!?じゃない。その反応されれば誰だってやりたくないって言うだろ!」
と、拒否したけど、ユチョンが…
「ねねね、ユノヒョンはリンゴとみかん、どっち好き?」
「え?…っえ?」
強行突破された。
「りんごと~みかん。どっち~?」
っく、ユチョンが…可愛いアヒル口で…俺に…
「ね~?ヒョンはどっちが好き~?」
……ユチョンズルい!俺がその顔されると弱いって知ってるから!!
「わ、分かった。答える、答えるよ…」
「おい!ユノ!ユチョンに甘い!!」
「ジェジュヒョン!今は取り敢えず我慢して!」
「うえ~ん!じゅんすぅ~!!」
「はいはい。よしよし。」
「えーっと…りんごかな?」
万を時して答えた俺に3人の顔が一変に可愛くなくなった。
なに?俺、なんか間違えたか?
「嘘だ~~~~~!嘘だ嘘!!ユノがりんごなんて絶対違うよ!!!」
「なんで全否定だよ!俺はどっちが好きかって聞かれて正直に答えただけだ!」
「ヒョン!ここに来て嘘はついちゃいけないんだ!」
「ジュンスまでなんだよ!」
「嘘だ~~~~~!ユノがりんごなんて嘘だ~~~~~!」
ジェジュンとジュンスがなんかよく知らんが、暴れ始めた。
てか、俺の好みを何故こうも否定されなきゃならんのだ!
腹が立つ!
「ジェジュン!いい加減にしろよ!」
「うわーん!ユノが怒ったぁーーーーー!じゅんすぅ~~~!」
「あーはいはい。よしよし。」
だんだんカオス化し始めるスタジオ内。
チャンミン、あいつよくこんな中爆睡できるよな…
「ユノヒョン、本当にりんご?」
「そうだけど…ユチョンまで疑うのか?」
「ううん。俺はユノヒョンを信じるよ。ジェジュヒョン、良かったじゃない?りんごで。」
「ユチョン!お前、なんでユノの肩持つんだ?まさか2Uでも狙ってんじゃねーだろうな!」
「そうじゃないって。よく考えてみてよ。みかんだった場合、もっと酷かったって事でしょ?だったら、まだりんごで良かったじゃない。」
「そ、そういえばそうだけど…」
「そうだね…ジェジュヒョン、ユノヒョンのアレは多分治ることはないんだよ。ジェジュヒョンが淋しい時は僕やユチョンそれにチャンミ………僕やユチョンがいるから、ね?」
「う、うえ~ん!うりじゅんすや~~~~~!俺はお前達可愛い弟がいれば生きていけるよう~~~~~!ユノなんかもう知らん!ユノなんかりんごで充分だぁーーーーー!」
勝手に聞いて勝手に完結させるなよ!
俺はその心理テストの答え知らないままだ!
「教えてあげましょうか?」
「おうああぁあ!?チャ、チャンミン!起きてたのか?てか、俺の心の声っ!」
「こんな騒がしくて寝てられねーですよ。人が体力回復させようとしてんのに、無駄に元気ですね、ウチのお兄様方は。」
すまんな、チャンミン。
でも、いつものことだろ…
「そうです。いつもの事だからいんです。別に。」
「人の心を読むな。お前はエスパーか。」
「りんごは恋人、みかんは友情、友達を大事にする。って内容らしいです。」
「…は?」
「…(わかんねーのかよ。)ヒョンがいつも休日、または空いた時間、はてはジェジュヒョンとエッチしない日の就寝前、何をしていますか?」
「…………(こいつ、今、わかんねーのかよ。って思ったな。)」
「思いました。」
「だから読むなよ。」
「顔に出過ぎなんですよ。ヒョンは。自分の気持ちに正直なのはいいですけどね。せめて、恋人の顔色ぐらい窺ってあげたらどうですか?ヒョンがジェジュヒョンに何も言わず友人と出掛けた時のあの人の様子ったら、家族として見てられません。」
「…」
それは、ユチョンやジュンスからよく聞いてた。
イライラして部屋を行ったり来たり、メールを神技で打っては、送るかどうしようか悩み、いざ送ったとしても帰って来ないメール。電話したって「すぐ帰る。」っと言ってなかなか帰って来ない。
最終的にはヤケ酒をしてチャンミンに絡み、怒っていたかと思えば、「ゆのゆの」言いながら泣きじゃくる。ユチョンやジュンスが終始慰めてるようだが…
俺はそんなことになってるとも知らず、能天気に帰って来ては弟達にいつも怒られてた。
「面倒臭いですか?」
「え?」
「正直、ジェジュヒョンみたいなタイプ、男として面倒臭い部類じゃないですか?」
「…そう、なのか?」
「は?だってそうでしょ?友達と気兼ねなく遊びたいのに、恋人の所為で出来ない。友情大好きユノヒョンからしてみれば、そうでしょ。」
「ああ、確かに。一般的に見ればそうかもなぁ。」
「一般的って…ヒョンもそう思ってるんじゃないですか?」
「いや…思ってない。ジェジュンを悲しませてる事を悪いとは思ってるけど、面倒臭いとは一度も思ったことないな。」
「…っは!そうっすか!僕はもうやってられません!ほら!収録!僕達の番ですよ!」
「お、おお。」
俺の返答に不服だったのか、いきなりラジオの台本をバシバシ叩いて怒り出した。
「なんだよ、怒るなよ。」
「怒ってませんよ。ただ、チャンスを逃したなと…」
「なんだと?」
「ふん。あんたが一回でも面倒臭いって言ったら、僕がジェジュヒョンを幸せにしようと思っただけです。」
「なにっ!?」
「はっはっは。冗談ですよ。さ、収録収録。」
サラッと爆弾を落としてブースの中に入っていってしまったチャンミンの背中を睨むように見つめる。
俺よりも高い身長。
幼い顔も変わり、随分と男らしさが増した。
それに、以前の薄っぺらい身体つきも今では嘘のようにがっしりとしてきた。
そんな後ろ姿に、メンバーとして頼もしさを感じるが、一人の男として…
こんな男が、あいつの近くにいるということに、今更ながら感じる焦り。
「くそ…」
思わず出てしまった事にハッとし、俯く。
いかんいかん。今からラジオの収録なんだ。
気持ちを切り替えないと。と上げた視線の先にジェジュンがいた。
ジェジュンは届いたハガキを一枚一枚大事そうに読んでいたが、俺の視線に気付き顔を上げた。
俺と目が合うと、唇を尖らせフッと視線を反らせまたハガキを読み始めてしまった。
とにかく…
俺の姫様のご機嫌を取らなければ…
あいつが愛してるのは俺だ。チャンミンなんかに渡してたまるか。