放り込まれるように入れられた防音室。
俺への子供のような注意といい、ジェジュヒョンへの気持ちを無視した言葉といい、俺の怒りは頂点まで昇っていた。
「お前、一体何が不満なんだ?」
電気も付けず俺を見据えるユノヒョン。月明かりを頼りに見るその顔は意外にも冷静だった。
その表情が更に俺の怒りを煽る。
「何が不満?そんなの不満だらけだよっ!!あんた、俺のこと嫌いなんだろ!?ジュンスやチャンミンには甘くて俺にばっかり怒る!」
「それは、お前が礼儀を弁えないからだろ?」
「あれしろ、これしろって、そんな煩く言われなくても、やらなきゃいけないってことわかってんだよっ!!」
「わかってるんだったらやれよ。」
至極冷静に言われ、感情を制御できない自分が子供に思えた。
こんなのは自分じゃない。
こんな、言うことを聞かない我が儘な子供みたいな自分・・・・
「っつ・・・・・う、うるさい!うるさい!!なんだよ、それ・・・あんた、俺の父親かよっ!!」
「そうだよ。ユチョン。」
・・・・力が抜けた
「な、んだよ・・・それ・・・」
「ユチョン・・・・俺はお前と家族になりたいんだ・・・友達でもあり、親でもあり、兄弟でもあり・・・・支えて、支え合って、色んな全ての感情を東方神起という家族みんなで分かち合っていきたいんだ。お前は・・・嫌か?」
気付けば、ユノヒョンの声音は優しいものへと変わっていた・・・
「・・・・俺は・・・一人でいい・・・一人が・・・」
「嘘付け。」
ふわりと・・・抱きしめられた・・・
あったかい・・・・
「やめてよ・・・・離して・・・」
「離さない。」
強く、抱きしめられる・・・
嫌だ・・・早く離れないと、ダメだ・・・ダメだ・・・・
俺が・・・・ダメになる・・・
そう思うのに、身体が言うことを効かない
「ユチョン・・・初めて俺等が会った時のこと覚えてるか?お前、あの時、初めて会ったにも関わらず感情モロにぶつけてきただろ?俺はユチョンのこと「素直で正直な奴なんだな」って思った。
でも、あれから、お前は俺を避けるようになって・・・俺・・・嫌われちまったのかなって・・・すごいショックだったよ。
それでも、お前と仲良くなりたくて、見るたび声かけるようにして・・・何でか分かるか?」
抱き締めていた腕を少し緩め、顔を覗き込まれる。
きっと、今、俺の顔は情けないことになってる・・・
「お前の俺を見る目、いつも不安そうで、寂しげで・・・・助けてって・・・ずっと、言われてる気がしてた。」
両手で頬を優しく挟まれ、顔を上げられる。
そして、あの時と同じ、ユノヒョンの・・・あの温かい、綺麗な指で、溢れる涙を拭われ・・・
「ユチョン・・・・一人になろうとするな、一人に慣れるな・・・・俺と、いや・・・俺達と、家族になろう?」
もう、止められなかった。
無我夢中でユノヒョンにしがみつき、これまでの自分のことを泣きながら喋った。
アメリカの生活に慣れなかったこと、両親が離婚したこと、愛する母親に捨てられそうになったこと、弟を必死に守ってきたこと、誰にも頼れなかったこと、一人で頑張らなければいけなかったこと・・・・母や弟をアメリカに置いてきたこと・・・
本当は誰かに甘えたくて、誰かに縋り付きたくて・・・泣きたくて、苦しかった。
俺が泣きわめいている間、ユノヒョンはずっと俺を抱きしめ、背中を優しく摩っててくれた。いつのまにか、二人で床に腰を下ろし、それでも、抱きしめられた腕はそのままで・・・
「俺、あんたのこと嫌いだった。・・・・自分が・・・・一人で必死に頑張ってきたものを、・・・・簡単に壊されそうで、ずっと・・・避けてきんだ。
・・・同じグループになってから、俺にばかり怒るあんたがいて・・・・自分がちゃんとしなきゃいけないってことは分かってた・・・でも、俺が反発すれば、あんたは俺を見てくれる・・・甘えられないからって・・・あんな態度ばかり、とってた・・・・」
「うん・・・」
「縋り付きそうになるのを、あれで、堪えてた・・・」
「うん・・・分かってたよ・・・」
「ふふっ・・・ホントかな?」
だって、ジェジュヒョンの気持ちに気付いてないのに・・・
「ユチョン・・・お前・・・笑うと可愛いな。」
「はっ?」
何を言い出すんだ・・・この人は!
「うん。俺が思ってた通り、ユチョンは笑ってた方が断然可愛い!!いつもそうしてろよ。な?」
そう言って、頭をぐしゃぐしゃにされた。
それが、とても擽ったくて、心地よくて・・・
「父親って・・・こんな感じだった、気がする・・・」
「おい。俺、お前とそう年が違わないんだけど?そういや、さっきも父親って・・・」
「だって・・・ぷっ!」
「このやろ~!!笑ったなぁ!!!」
「あははは!!」
何年かぶりに、心から笑えた気がする・・・・
一頻り笑いあった後、そろそろ寝なければと腰を上げた。それぞれの部屋に行く前に俺は意を決して
「ユノヒョン!」
と呼んだ。
俺が彼の名前を言うのは、この時初めてだった。
驚いた顔のユノヒョン・・・
「今まで、ごめんなさい。俺、これから・・・ちゃんとする。みんなに、家族として認められるように・・・人と向き合えるように・・・」
「おう。・・・みんな、お前が笑う姿を待ってるんだからな!」
「ありがとう。ユノヒョン。おやすみなさい。」
「おやすみ、ユチョン。」
頑張っていける・・・みんなと・・・そう思った。