「はい みんな集合」秋吉先生は科学部の受け持ちだった。

「今年の新入部員は10人です、じゃあ一人づつ自己紹介をするように」

私は小学校の時も科学クラブに在籍し県の表彰程度はもらっていた。スポーツはパスして文科系の部として自然に選んだ。

当時、父親の転勤で田舎の中学校に行くことになった。田舎の方では小学校をいくつか統合して中学校を1つにする。

小学校一年間で出身校の同学年は見知っていたが同じ新入部員でも知らぬ者がいた。

ましてや先輩となれば全然知らなかった。

先輩の自己紹介も始まった。

「2年1組 東城 かすみです。よろしくお願いします」 ショートカットの背はさほど高くないその女性に私は一目ぼれしてしまった。

小学校までは女子の成長が早く男子は子供子どもしているというのが当時の実情だった。

私は身体の変化は子供だったが読んでる本は

同級生より3歩は先だったろう。春休みにはプロレタリア文学や哲学の本を読んでいた。

私は、かすみ先輩の笑顔に一瞬間でとりこになった。理性的にあろうという思いとこの世にこんなに可愛い人がいるんだいう思いがないまぜになった。耳まで赤くなっていたのだ。

今回は見学をして先輩の研究についていくか自分で研究したいことがあれば報告する旨先生から言われた。

私は顔を真っ赤にしたまま固まっていた。