アネモネ

22歳の誕生日を迎える直前にその話は始まった。通常8月に一般職の異動が発令されるのだが私は4月の調整移動にて今のU市に異動になった。経緯は書かないが組合と人事の狭間にあって異動になった。新入社員から丸三年

の四月一日付けだった。

新しい職場に早く慣れようと意気込んでいた。

反面、Sさんと言う女性(セカンドラブ)に何の意思表示もできずにいた自分を情けなく思っていたっけ。

ある先輩の読み終わったビッグコミック(スピリッツだったと思うが曖昧である)の一話目に釘付けになった。以来、汽車通勤の先輩のお下がりを読ませていただき文庫本を買いそろえ始めた。優柔不断な主人公。それよりもダメな私はハッピーエンドを願いつつ主人公に感情移入していった。酔っぱらっては同じ本を買ったりもしてたっけ。

本の題名は「めぞん一刻」である。今では読み返すこともないが二階の部屋に置いてある。五代君ほどの勇気が欲しかった。本当にダメダメな人間だった。他のことは自信満々でこと女性に関してはからっきしだった。

そんな自分が結婚し離婚を経験し再婚まですることになるとは考えも及ばなかった。特に離婚は痛みが大きかった。再婚は惚れられ婚と過去ブロでも公言しているが離婚して結婚に対して不信感を持つよりも独身が恐くなったと言うのが正直なところだ。私は初婚の人には尽くし続けたと今でも思っているし離婚の引き金になった「愛せない」という言葉は今でも忘れない。良い悪いという問題では結婚も離婚もできないのだろうな。