告白  | アジア読書

告白 

チャールズ・R・ジェンキンス, 伊藤 真
告白
こんな本が出ていたことはすっかり忘れていたのだけど、図書館で眼についてしまったので、とりあえず読まなくてはならない。この版権には相当争奪戦があったらしいけど、現在は佐渡金山職員としてシルバー人生を謳歌しているらしいから、その辺はそっとしといてあげよう。まあネタがネタだけあるから、角川も相当力いれた様で、ゴーストも上物っぽい。しかし、英語と日本語どっちにゴーストがついたのだろうか。私も脱北もの読破に関しては決して和田春樹先生に引けをとらないと思うが、北の場合、いずれにしてもあの政権が倒れない限り、真相は薮の中みたいなところがあるから、こうした打ち出の小槌はどんどん出してほしい。曽我さん本人や蓮池さん地村さんがこうした本を出せないのは、情報戦ということで間違いないとは思うけど、この本を読むと、平壌を知る外国人は結構いた様なので、どっかこの分野を開拓してくれないかな。囚われの身の特権階級というのは実に興味深いものだ。中でも、独身男性はオンナ無しでは生活できないと北が認識しているところは注目したい。拉致問題も究極はそこに繋がってるのだが、このオッサンを始め、米軍脱走兵たちに、ちゃんと、「子供の出来ない北朝鮮女性」を性のパートナーとしてあてがったという。これぞ「従軍慰安婦」的発想としか言えないが、戦前の日本でも家政婦が文字通り「身の廻り全て」を世話するというのは暗黙の了解があったという話は聞いたことがある。如何にも大日本帝国を究極のモデルとする北の考えそうなことだが、抑圧社会に生きる者にとっては、性の捌け口がないというのは危険な状態であろうし、その辺りはフェミニズムと折り合いをつけていかなくてはならない問題であろう。まあ「朝鮮女性同盟」がどうわめこうと、「先軍政治」において女性は道具以下の存在であることは間違いない。当然このオッサンもその恩恵は受けているはずだが、ひとみさんを初めて見た時、こんな綺麗な女性がこの世にいたのかと心臓が止まりそうだったとのこと。まあ「捌け口」がありゃ良いってもんでもなく、次は「愛」を求める様になるということでしょう。てな感じで、わりと楽しめた本だったが、いつの日か、美花さんとかブリンダさんの「囚われの国の思い出」を読んでみたい。父親がアメリカ人、母親が日本人の少女が北朝鮮で生きるということはどういうことなのか。何でも長女の美花さんは強固な体制支持派だったという。外の世界を知り、あっという間に転向したらしいが、そろそろその日々を振り返っている時期ではなかろうか。