暗雲たちこめ
荒浪の海原。
人々はもがきながら
その船に救いの手を伸ばす。
それは千の腕を伸ばすが
人々には届かず。
時には那由多の光を降ろすが
彼らの固く閉じた眼(まなこ)には
その光さえ届かない。
そこに荒浪はあるのか。
そこは本当に暗雲たちこめる世なのか。
何度生まれてきて、この世界を見ても
人々は我が力で立つことをしらず、
ただ何かにすがり、
外側に神をつくる。
その声、その光に
みな恋い焦がれ
救いを求める。
しかしその目は
幻想を追いかけ、
その耳は空言だけを拾う。
待ち焦がれた奇跡にすら気づかない。
いっそ
救われることを諦めてしまえばいい。
荒波に身をまかせ、
もがく手足の力をほどけばいい。
眼を開き、
暗雲がそこに本当にそこにあるのかを
見てみるといい。
沈む身体は全て諦め
深く安らいだとき、
両足は大地を掴む。
人は自分の足で立てたとき、
初めて「この世界」を見る。
そこでやっと世界が始まる。

