流行病の解剖図(あなたの選ぶ道) | あなたは「幸せ」ですか それとも「不幸せ」ですか...  ニコラスの呟き...

あなたは「幸せ」ですか それとも「不幸せ」ですか...  ニコラスの呟き...

いつの間にか前期高齢者になっていました。65年以上生きてみると 色んな事を経験しました。「達成」「失望」「離別」「病気」...
それぞれの経験に意味があると最近思います。お会いすることのない、どなた様かのお役にたてば幸いです。      

 

下記の記事は2015年01月16日(金) 掲載の

流行病の解剖図(Anatomy of an Epidemic) に加筆修正したものです。

 

 

『 Anatomy of an Epidemic 』

これは、何度も推薦図書として紹介している、『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』(R.ウィタカー著)の「原題」である。

 

直訳すれば「流行しているものの解剖」とか「流行の解析」であろうか。

Epidemicは、Epidemic Diseaseの省略であり、Anatomy (解析・解剖図)に繋がるので、

『流行病の解剖図』または『流行病の解析』が「原題の翻訳」だと思う。

 

また「副題」が

Magic bullets, Psychiatric Drugs, and the astonishing rise of mental illness in America.

→「魔法の弾薬、向精神薬とアメリカでの精神病の驚くべき増加」なので、

「原題」と「副題」を考慮した書籍名『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』とされたのだろう。

日本での出版社(福村出版)の工夫の跡が感じられる。

 

仮にタイトルを『流行病の解剖図』にされていたとしても、彼の伝える向精神薬による薬物療法の「仮説」をめぐる、

精神科医、精神医学会、家族会を含む患者団体、製薬会社、政府の利害関係者にまつわる話は非常にショッキングであり生々しい。

まさしく「解剖図」である。

 

この本を最初に読んだ時、

著者・Rウィタカー氏に関して私が最初に思った事は、彼の個人的なバイアスがないのかということであった。

それはバイアスを誘発する「二つ」の「個人的な立場」である。

一つは、彼自身もしくは彼の家族が精神医療の被害者であったかということ。

そしてもう一つはサイエントロジーの関係者ではないのか…と

 

私を含め精神医療に何らかの被害を被ったと感じる者は、その意見にバイアスがかかる事はごく自然なことである。

 

またサイエントロジーの関係者は、まず最初に結論として「反精神医療」論者であるため、取り扱うエビデンス自体にバイアスが加えられたもののため説得力に欠けると感じたからである。

 

しかし彼の経歴を調べてみると全く予期しないものであった。

 

Rウィタカー氏は、新聞記者、製薬関係の出版社の共同経営を経てフリージャーナリストとして精神医療と製薬業界について精力的な執筆か活動を行う、そして様々な賞を受賞する。

 

精神医学研究における患者への虐待を扱った1998年の連載記事はピューリッツァー賞の最終候補にも残った。

また本著『 Anatomy of an Epidemic 』はエディターズ&リポーターズ協会の2010年「調査報道・最優秀書」に選ばれている。

 

共同経営の出版社「センターウォッチ」の主な読者は製薬会社、大学医学部、民間医療機関、などで

「新薬開発をもっぱら業界に好意的な立場で扱っていた(原文ママ)」そうである(1)。

 

大雑把に分類すればR.ウィタカー氏は「メディカル・マフィア」側の人だったと言えるのかもしれない。

 

サイエントロジーに関しては、本著 14章「語られた筋書きと、語られなかった筋書きと」の「助け舟サイエントロジー」(435-439P)で

イーライリリー社とサイエントロジーとの「攻防」を、

ジャーナリストの立場で冷静に精神医療における「サイエントロジー」の功罪を記述されていた。

取材過程で何らかの接触はあったかもしれないが、サイエントロジーの関係者だと思う事はなかった。

 

著者が「地雷原」(2)と揶揄する「精神医療の抱える問題点」に対する知的探求の出発点は極めて明快である。

 

画期的と言われる向精神薬による治療法が普及したのに、精神疾患の転帰は薬物療法が導入される以前よりも決して良くなっていない。

それどころか悪化しているとさえ思われるのはなぜだろうか、

薬物療法が有効であるとすればその疾病の転帰は良くならなければならないのは当然である。

精神疾患者の数は減少し症状も軽減し病期は短くならなければならないはずである。

しかし精神科医療の現場はより長期的に薬物療法を必要とする人たちが増え、

精神疾患者と言われる人が急増しまさに現代の流行病になっているのが現実である。

精神医療のどこかに問題がある事は間違いない。

 

これが著者の反精神医療の「出発点」である。

 

ライターの村上朝子氏が著者に同著の反響を問い合わせたインタビュー(3)によると

「精神科医、精神医学の主流派のなかにはこの本を厳しく批判する人たちが多いが、

それは科学的反駁の形をとっていない。そして製薬会社は沈黙している」そうだ。

 

これほど精神科医、精神医学会、家族会を含む患者団体、製薬会社、

政府の利害関係者にまつわるショッキングで生々しい話しを「暴露」されているのに…

なぜ科学的に「反駁」・「反論」できない!  

なぜ「沈黙」しているのだ!!

 

SNSで私を含めた反精神医療ブロガーの記事を読み漁るより、

この本を「熟読」する方が精神医療と決別する近道である。

 

向精神薬が何故「発明」され、それによって誰が不当な「利益」を得て、

「悩める健常者」が如何に不条理な「医療行為」を受けているかという「真実」を知れば、

あなたの選ぶ道は「一つしかない」からです。

 

 nico

 

 

(1)引用・「はじめに」13-14P

(2)原文・こうした経緯で私は精神医療という「地雷原」に足を踏み入れることになった。(15P)

(3)2014.2.21号「週刊金曜日」30P