彼女の夫と初めて会ったのは

 

結婚が決まって

 

会って欲しいと言われ

 

居酒屋さんで待ち合わせをした

 

 

お座敷に上がると

 

目がくりっと大きめの

 

うーん

例えば

 

渡辺徹さんのような

 

愛想が良さそうで

背が高めの体格の人だった

 

ああこういうタイプが好みだったんだ

 

なんて思って

 

和やかに時を過ごした

 

地元の大学を出て働いており

 

どういうご縁でお見合いに至ったかは

 

失念したが

 

優しい印象を受けた

 

 

大事にしてくれそう

 

そう思った

 

 

 

次に会ったのは

 

結婚式のお手伝いを頼まれ

 

打ち合わせした時

 

 

その時

 

彼は開口一番

 

あれーカナリアさん

 

シワが増えたねー って

 

2か月前に会ったばかりの25歳の女性に

 

失礼な事を言う方なのね

 

と内心思ったが

 

これもご愛嬌と心に収めて

 

彼女のにこにこした横顔を

 

目を細めて見ていた

 

 

 

彼女の結婚式は壮麗だった

 

『木遣』(きやり)という男衆が何十人も

 

纏(まとい)を操りながら行列を成し

 

見事な節回しの

 

朗々と謳いあげる唄い手が

 

天井の高い大きな会場に入り

 

 

平安時代のような

 

長もちなど嫁入り道具を抱えた男衆が続き

 

仲人

 

新郎

 

そして

 

艶やかな色打ち掛けに身を包んだ彼女が

 

仲人夫人に手をひかれて入って来た

 

 

目を伏し目がちにしながらも

 

彼女の幸せそうな微笑みに

 

これで安心したと

 

母親のような気持ちで眺めていた

 

 

有力議員の主賓挨拶

 

乾杯の発声と

 

招待客はVIP揃いだった

 

 

女子高校では同じ合唱部だったので

 

定期コンサートの時に

同級生が作詞作曲した歌を

 

ソプラノ、メゾ、アルトに分かれ

彼女も含めて10人で披露した

 

この曲は高校生が作ったとは思えない程

心奪われる曲で

 

ピアノ伴奏の楽譜も緻密で

 

ソプラノのオブリガートソロも

とても美しい旋律だった

 

同学年14人が数年ごとに集まっては

 

今でも歌い続けていて

感動的で

交響曲のような壮大な曲であった

 

 

その作者は後に

センター試験を受けて

 

難関国立の音楽科に入学した

 

 

納得である

 

 

 

3時間ほどの祝宴の後

 

いただいた引き出物は

 

瑠璃色のディッシュ5枚で

 

縁に銀の細工がしている見事なデザインだった

 

今も大切に使い

 

その度に彼女を思い出している

 

 

 

彼女の新婚生活は

 

周りから見ると気の毒のように思えたが

 

小さい子どもを遺された旦那さんの心労も

 

いかばかりだったかと思う

 

 

居原田医師のご主人も

 

4人のお子さんを育てて行かねばならず

 

悲しみに暮れる間も無く

 

重積を抱えて大変なことと慮ってしまう

 

 

 

親友が旅立った1年半後

 

再婚すると人づてに聞いた

 

 

ええー

 

と悲しみを覚えたが

 

年賀状に写る4人の家族写真を見て

 

少し安心した

 

 

なんと親友そっくりな奥さんだった

 

そして

 

少し大きくなったお腹に

 

手を当てながら

 

遺された子供達への眼差しが

 

まるで親友そのものだった

 

 

 

 

ねえ。。

 

 

やっぱり心配で


やって来たんでしょ。。