子供の権利条約から、(離婚別居後の)子供の権利を考える -9ページ目

「親子の生き別れ」を招く、片親疎外について

(学術論文)「片親疎外」に関する最新情報
大正大学の青木聡教授が、「片親疎外」をメインテーマに開催されたAFCC(国際家庭裁判所/調停裁判所協会)第47回大会の参加報告として「片親疎外」に関する最新情報を大正大学研究紀要(pp.169-176)にまとめられましたので紹介します。

【題名】
(学術論文)「片親疎外」に関する最新情報 -AFCC(Association of Family and Conciliation Courts)第47回大会(2010/6/2-5)参加報告

【著者紹介】
青木聡(あおきあきら)大正大学 人間学部 臨床心理学科 教授

【内容紹介】
離婚後の単独親権制度を採用する日本において、高葛藤の離婚家族で起きる「片親疎外」1)が深刻な問題となっている。日本では「離婚は縁切り」とみなす伝統的家族観や「別居親は遠くからそっと見守るのが美徳」とする社会的通念が根強いためか、離婚後は「ひとり親」で子どもを育てていくというイメージが世間に定着していると言っても過言ではなく、文字通り「夫婦の別れが親子の別れ」になってしまう場合も多い。
離婚後だけでなく、高葛藤の別居にあたって一方的に子どもを連れ去り、もう片方の親と子どもの交流を断絶する「連れ去り別居」が頻発していることも深劾な問題である。
一方、欧米諸国では『児童の権利条約(児童の権利に関する条約)』(1990)の批准と前後して、離婚後の共同養育(共同監護・共同親権・共同親責任)制度が整備されている。子どもの健全な成長のために、両
親は離婚後も「親子不分離の原則」(第9条第3項)や「共同親責任の原則」(第18条第1項)に則した共同養育の「義務」を負うのである。実は、日本も『児童の権利条約』は批准しており(日本の批准は1994
年)、協議離婚の際に子どもと別居親の面会交流について定めることを提案する民法改正試案も公表されている(法務省、1994、1996)。しかし、いまだに民法改正に至っておらず、離婚後の共同養育制度の実現
には程遠い現状と言わぎるを得ない。
現在の民法では面会交流に関する明文化された規定が存在しないため、離婚後ないし別居中の「片親疎外」は事実上野放しになっており、離婚紛争時の子どもの「奪い合い」は次第に熾烈化している(棚瀬、2010)。
実際、『司法統計年報』(2008)を参照すると、平成20年度の面会交流紛争の事件数は10年前と比較して3倍以上に急増しており(表1)、「片親疎外」への対策が喫緊の課題といえる。ところが日本では、専門
家のあいだでも「片親疎外」の問題はほとんど知られていない。そこで本稿では、「片親疎外」を大会テーマとして行われたAFCC第47回大会での議論を報告し、「片親疎外」をめぐる最新の話題を紹介したい。

Ⅱ 大会の概要

AFCC(Association of Family and ConciliationCourts:国際家庭裁判所/調停裁判所協会)第47回大会“Traversi,g the Tral ofAhenation‐ RockyRelationships,ヽ4ountains of Emotion,Mile Highconnict"は、2010年6月2日(水)から5日(土)までの4日間の日程で、アメリカ・コロラド州デンバーのシェラトン・デンバー・ダウンタウン・ホテルで
盛大に開催された。大会には21ヵ国から約1,500名の離婚問題の専門家(裁判官、弁護士、調査官、心理士、児童福祉士、ペアレンティング・コーディネイター、ミディエイター、子どもの代理人など)が参加していた。参加者の大多数は欧米諸国から来ていたが、南米諸国やアジア諸国からの参加者も散見された(残念ながら、日本からの参加者は筆者だけであった)。特記すべきは、大会テーマが「片親疎外」であったため、「片親疎外」に詳しい世界的に著名な各国の研究者が勢ぞろいしていたことであろう。大会期間中の全体会4セッションと分科会80セッションのすべてが「片親疎外」に関する発表であり、2010年時点の「片親疎外」をめぐる最新の話題が網羅されていたといえる。本稿
では、そのうち大会実行委員会が主催した全体会4セッションの議論を報告する。
(以下略)