博多座初観劇。
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地下鉄上がったら、そこが博多座。
聞いてはいたが飛行機降りてから楽。
6月12日水曜日夜の部
「夏祭浪花鑑」 (なつまつりなにわかがみ)
片岡愛之助(かたおか・あいのすけ)の団七(だんしち)。なんでもない立ち姿がきれいに決まる。
意外や重心の低い体型なのだなと発見した気分。
尾上菊之助(おのえ・きくのすけ)の徳兵衛(とくべえ)は美しすぎ。
チンピラ感がまるでない。ただあまりにきれいなのでがっかりするわけではなく、鼻筋がきれいだなあなどとみとれる。
中村歌女之丞(なかむら・かめのじょう)の三婦女房(さぶにょうぼう)おつぎは安定のよさ。
痴話喧嘩をしている磯之丞(いそのじょう)と琴浦(ことうら)をたしなめるせりふが、なんとはなしに耳にしっくりとくる。
文楽でわかった、この前の場面の駆け落ちには一切触れない内容になっていて、ただの喧嘩になっている。
釣船三婦は中村鴈治郎(なかむら・がんじろう)。からだ全体に愛嬌のあるいい三婦だが、もうひとつ迫力があるといいなと思う。
数珠を切って刀を腰に差して出かけていく気合も暖かく、すぱっと気が変わらない。
「羽根の禿」(はねのかむろ)
下手から見たせいで、登場した時の菊之助の姿勢が、ほとんどしゃがんだ形だったのでびっくり。
もちろん誰でも子供らしくみせるためにやることだけれど、
その姿勢できちんと踊れることにあらためて感嘆。
羽付きの羽をなくして、どこにいったのかしら?と探す振りが抜群にかわいい。
「うかれ坊主」(うかれぼうず)
非常に真面目なうかれ坊主。
だけれども、この踊りはついでにちょっと踊って見たよという軽さがないとどうしようもないのでは。
振りもからだの軽さも申し分ないだけに、お父さん(尾上菊五郎)の〈いいかげんさ〉を彼の体の中から発掘してほしいな。
「三人吉三巴白浪」
(さんにんきちさ・ともえのしらなみ)
大川端庚申塚の場(おおかわばた・こうしんづかのば)
お嬢吉三(おじょうきちさ)に中村梅枝(なかむら・ばいし)、お坊吉三(おぼうきちさ)に中村萬太郎(なかむら・まんたろう)、和尚吉三(おしょうきちさ)に坂東彦三郎(ばんどう・ひこさぶろう)。
萬太郎は、兄・梅枝ともども芝居感がいいのだろう。
背格好からいったらお坊のイメージではないけれど、駕籠のたれがぱっと揚げられた瞬間、柔らかいいい顔をしている。イイ男だねえと思わせる顔。
梅枝もせりふがうまいので「月も朧に」に聞き応えがあって気分よく幕が閉まる。
物足りない一幕になるかと思ったのを裏切られてうれしい。
博多座は芝居がはねても売店が開いている。
売り子さんたち元気いっぱい声を掛けていていい雰囲気。
パン屋さんは売れ残りをまとめて千円セールをやっていて次々と売れていた。
家に帰る立場だったら絶対に買ってたな。
6月14日金曜日昼の部
「廓三番叟」(くるわさんばそう)
中村雀右衛門(なかむら・じゃくえもん)、梅枝、彦三郎。
何度か見た演目だが、毎度これといって見どころがわからない一幕。
正月支度の舞台面がきれいだなと思っている内に終わってしまった。
「人情噺文七元結」
(にんじょうばなしぶんしちもっとい)
長兵衛(ちょうべえ)に菊之助、女房お兼(かね)に雀右衛門。
きれいな菊之助なのに小汚い長兵衛の愛嬌がたっぷりあってよかった。
手代文七(てだい・ぶんしち)に萬太郎。髪結新三(かみゆいしんざ)の時に、菊之助の新三と萬太郎の手代忠七でいいコンビだったが、今回も同じ。
川端での文七と長兵衛の会話の流れも、もう知っているのに聞き入ってしまううまさ。
お久(ひさ)に上村吉太朗(かみむら・きちたろう)。ふっくらとした風貌がいかにも孝行娘という風情。
ほかの配役もまさに適材適所でいい塩梅の一幕。
「太刀盗人」(たちぬすびと)
鴈治郎、愛之助コンビ。
もう適役としかいいようのない、真っ黒黒兵衛の鴈治郎。
生真面目な愛之助の万兵衛(まんべえ)とともに、終始ニコニコしていられる芝居だった。
中村寿治郎(なかむら・じゅじろう)の従者藤内(じゅうしゃ・とうない)が山椒は小粒でビリリと辛いといった役所(やくどころ)で、猫の仕草をする振付の踊りがからだが利いていて目に残った。
この日は2階席を高校生が占めていた。
売店の売り子さんが高校生は¥100引き!と声を掛けていて、それに魅かれて買おうとしている学生たちがかわいかった。