国立劇場 小劇場
2023/05/28 日曜日



あらすじは↓で。
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc26/sakuhin/sewa3.html

*歌舞伎では見た事のない「内本町道具屋(うちほんまちどうぐや)の段」がおもしろい。
後に続く、普段よく見る「釣船三婦内(つりぶねさぶうち)の段」の冒頭で磯之丞(いそのじょう)と琴浦(ことうら)が痴話喧嘩をしている内容がよくわかる。

「内本町~」で身分を隠し道具屋の手代として働いている磯之丞は、*店の娘・お中(なか)といい仲になってしまい、挙句に駆け落ちをする途中で釣船三婦と出会っていたことがわかる。そのため、以前から恋仲だった琴浦に浮気を責められ痴話喧嘩となっている。

琴浦に責められ磯之丞が抗弁して「据え膳と鰒汁(ふぐじる)を喰わぬは男のうちではないわいやい」と言ってのけるあたりいいねえ。
後ろに座っていたオジサンも思わず声に出して「オイオイしょうがねえなあ」と噴き出していておもしろい。

こんな性根のない磯之丞様のために、団七(だんしち)も徳兵衛(とくべえ)もしゃかりきになっているという物語の構造がなんともいい。

見せ場の「長町裏(ながまちうら)の段」では、団七を竹本織太夫(たけもと・おりたゆう)、義平次(ぎへいじ)を豊竹藤太夫(とよたけ・とうだゆう)が語り分け、泥まみれの殺し場が盛り上がり緊迫した場面になった。
桐竹勘十郎(きりたけ・かんじゅうろう)が遣う団七が義平次を殺した後、死体を跨ぎ背を見せて大きく左右を見込むところなんとも爽快。

最後の最後〈八丁 目指して〉と幕が閉まる直前、全速力で走る団七の姿を見せて胸がすく。しばらく拍手が鳴りやまず。


*歌舞伎では見た事のない「内本町道具屋
検索をかけると、歌舞伎では2013年10月大阪松竹座に於いて、愛之助の団七で出しているのが一番新しい。
10年前だから、また通しで出してほしい。

*店の娘・お中(なか)
駆け落ちしたのに、釣船三婦に送られて家に戻されていることが、三婦女房おつぎの口で語られている。
それきり登場しない。気の毒なことである。