9月22日水曜日 18:00
桜姫大成功に続いての、またまた仁左衛門、玉三郎。
隠亡堀(おんぼうぼり)の*だんまりで終わってしまうので、終わると物足らない感じが残る。
それでも玉三郎のお岩様よかった。時間短縮のためだと思うが、以前は薬の包みを湯呑に伏せて粉まで飲もうとする段取りがあったりしたが、こまかい丁寧さが省かれた。
その分、しびれが出る、気持ちが悪くなる、顔に激痛が走るという毒薬がからだに廻るスピード感が出て怖かった。
あっという間に崩れた顔にお歯黒を塗ると口の周りが真っ黒にり、それを拭いもせず髪を梳く。大量の髪を前にバサッと前に持ってくる瞬間に、ウワッと目をそむけたくなる不気味さがある。
仁左衛門(にざえもん)の伊右衛門は、最初の傘張りをしている姿が素敵。落ちぶれても色男。彼にしか出来ない。
歌女之丞(かめのじょう)の乳母おまきもよかった。淡々と実務をこなす乳母。ちょっと例えは重いがアイヒマンなのだなこの人は。言われたからやっている、やっている事の残酷さに鈍感。お岩様への悪意などみじんも感じさせないし、お仕えしているお梅様に過剰な感情移入もない。主家がおちぶれても一生懸命最期まで仕えている。だからお岩様の恨みをかって死んでしまうのだねと納得できる。
ちょっと面白い人物像を見せてもらった感じ。
松緑(しょうろく)の直助権兵衛(なおすけごんべえ)。からだ全体の線が太くて、ギロギロとした目の動きもおもしろい。いい味があってもっと見ていたかった。
たまたまナショナルシアターライブの「メディア」を再見してきたところだったので、鶴屋南北作の「桜姫東文章」「東海道四谷怪談」ともに産んだ我が子を殺す話だと気づく。
南北の方は父親が我が子を愛していないから殺す意味合いは異なるけれど、血統を絶つという意志が女性にゆだねられているのはおもしろい。
*だんまり