2021年6月17日木曜日 14:00

新国立 小劇場

 

きゅっと詰まったいい舞台。堪能した。

 

高橋惠子、那須佐代子、鈴木杏、趣里の4人の女優が女優役で火花を散らす様がユーモラスに描かれている。

 

前田文子の衣装もよかった。

大御所女優役の高橋惠子は鮮やかな青いスーツに同じ生地のつばの大きな帽子。

お母さんシリーズの女優役の那須佐代子は薄い桃色の訪問着。きっちり締めた帯は唐織らしい、ジュエリーの帯締めちゃんとお金のかかった着物に見える。

ヴァンプ役で人気を得ている女優役の鈴木杏は、ワインレッドのブラウスに黒のパンツ。幅広のベルトでウエストを絞っている。

娘役で絶賛売り出し中の女優役、趣里は涼し気なアイスブルー色のワンピース。

チラシとは配色が違うけれど、イメージはピタリ一致している。

 

殺人犯人を捜すために集められたという設定になっているが、みどころは4人のやりとり。

舞台「豚草物語」再演の稽古の場面で、せりふを言い終わるたびに顔を正面に向けてほほ笑む、何が何でも「私」を全面に出す高橋惠子と那須佐代子の演技は傑作。

「去年亡くなった母の三回忌!」というセリフはツボ。

 

キネマと題にはあるけれど、ここでは映画で全盛を謳歌し、キネマが斜陽となった後、舞台へと進出する方向に向かっていく時代を感じさせる。

 

それにしても結局、4人に一時的に仲良くなってもらって仕事をスムーズに進めようというたくらみは、作者自身が女優のつばぜり合いの凄まじさを見てパラダイスを夢見たのかな。

 

最後に万年下積み歌舞伎役者役の佐藤誓が、東西の名戯曲の主役をあげていくせりふで切ない想いにさせて幕。心地よい味わいが残

る。