2021年6月9日水曜日 14:10
国立大劇場
「解説 歌舞伎の見方」
中村種之助(なかむら・たねのすけ/28歳)の解説。芝居の中の五十両の価値、元結(もとゆい)とは?などなど一つ一つ丁寧に説明してきちんと聞かせる。消毒液とマスクを売るぼてふりが登場するところがちょっとしたエッセンス。
「人情噺文七元結(にんじょうばなし ぶんしち*もっとい)」
あらすじは→https://www.ntj.jac.go.jp/kabuki/news/2328.html
芝居でちゃんと組むのが初めてという尾上松緑(おのえ・しょうろく)の長兵衛(ちょうべえ/左官屋)と中村扇雀(なかむら・せんじゃく)のお兼(お かね/長兵衛の女房)。矢継ぎ早に繰り出すお兼のせりふに松緑も乗っていいコンビ。
序幕の夫婦のやりとりもつっこみ気味なお兼の話し方がよかったが、最後の長兵衛内の場での夫婦喧嘩は、お兼が食いつかんばかりに長兵衛をののしるセリフのテンポ、強弱がうまくて爽快で傑作。和泉屋清兵衛(いずみや・せいべえ/)が来て、お兼が屏風の陰に隠れてからの屏風を使った芸-首を出したり引っ込めたりの工夫-は初めて見たけれど高校生が笑うほど間がよかった。
*角海老内証(かどえび ないしょう)の場で長兵衛娘お久の新悟もうまかった。父長兵衛にお金を渡す時、何度も念を押す繰り返しのせりふの微妙な緩急がうまく見ていてホロっとなってしまう。
大川端の場では、長兵衛が手代文七に金をやろうかどうしようかと戸惑い、遂には金を投げ与えて走り去るまで、徐々に胸が熱くなってくる。ここで客席から鼻をすする音がこんなに聞こえてきたのは初めてかな。松緑のせりふだけでそれくらい泣かせる場面になっていた。
隣り合って二人座り、その次は空席という座席の埋め方で一階はすべて高校生。二階は真ん中と上手席、四列目まで高校生。ほかは一般客なのだが、十人位しかいない。三階も四分の一埋まっていたかどうか。
チケット代安くておもしろいのに、コロナで客足は遠いのかな。
*元結
もとゆいがなまって、もっといという読みになる。
*角海老内証
角海老は吉原の揚屋の名。
内証は奥の間という意味。商売をする表に対して、私室という事。ここでは角海老のおかみさんの部屋。