2021年5月30日 日曜日 16:00
明治座
ほぼ満席。大向こうはないけれど、売店も食堂も開いていてなかなかの賑わい。
「実盛物語」
あらすじはこちら→http://enmokudb.kabuki.ne.jp/repertoire/1785
海老蔵はせりふがうまくないので、語るところはなんとなく流れてしまうし、最後に将来の敵討ちを約束し髪を染めて戦場に臨もうと言う時にスカッとしない。
けれども、からだの動きは抜群なので、物語の最中「女の一念健気さよ」の直前くるりと一周する動きがおもしろかったりする。
また、馬に跨る俊敏さもきれいで目を引く。
退場する時、花道で扇を加えてグッと見得をすると、それだけで見ている方の気分はさっぱりしてしまう。
右團次の瀬尾が下手の藪に引っ込む時、肩衣を上げて決まるという珍しい型を見せた。
(あらすじのサイトに平成19年に彌十郎が肩衣を上げている写真がある)
*平馬返り(へいまがえり)は刀を持たずに前転したのみ。右團次だったら刀を持ったままするかなと思ったのでちょっと残念。
屋台の下手に井戸があったのに、*小万(こまん)再生の時に九郎助が使わなかった。使わないときにも井戸は設置してたかな?
実盛が出立する直前まで*屋台の障子は閉め切りだったので、馬を呼ぶときにスッと開くと、これはこれで視界が開け気分が変わっていい。
*平馬返り
立膝の形から宙返りをする特殊なとんぼ(https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/modules/kabuki_dic/entry.php?entryid=1219)
なぜ平馬というのか不明。
*小万再生の時
九郎助の娘小万は死体で登場するが、斬られた腕を接がれると一時息を吹き返す。腕を接いで父・九郎助が井戸の所に行き、井戸の中に向かって名前を呼び掛けるという芝居がある。井戸が黄泉の国と繋がっていると言う習俗をもとにしたものだという。
「KABUKU」
クラブハウスでわいわいと話し合っている内に上演しようということになったという一幕。
サクッと作った手腕には感嘆するけれど、
1・しこめ(右若)と美女(芝のぶ)を出してきて、6人の読売男がしこめを笑う。
2・美女には男どもが群がって輪姦する。しかも上手奥でそれらしきし演技を見せる
3・コロナらしき病の元だと、辮髪の扮装の中国人を責める。その中国人がなまった日本語を使う。
4・太っている体型で笑いをとろうとする
とまあ、コンプライアンスのバージョンアップがまるでなされていない脚本。ひどいものだ。
犯された美女が「地獄へ落ちろ」と6人の読売をののしるが、雷に打たれて地獄に落ちると海老蔵扮する〈海老蔵〉が「考えは人それぞれ、ええじゃないか」と囃し立てて、
全員で「ええじゃないか」を連呼してメデタク幕。
にぎやかでパワフルだったし、 勸玄が飛六方を見せたりと楽しいところはあったけれど、二度と観たくないしこの路線で突き進むのは勘弁願いたい。