5月27日木曜日

11:00

 

「三人吉三巴白浪(さんにんきちさ ともえのしらなみ)」

尾上右近(おのえ・うこん)、中村隼人(なかむら・はやと)、坂東巳之助(ばんどう・みのすけ)の若手三人で〈大川端庚申塚の場(おおかわばた こうしんづかのば)〉のみ。けれども見終わるとこの顔揃えで*通しをみたくなる。

右近のお嬢吉三と隼人のお坊吉三が刀を抜く直前のせりふのやりとりは、

それぞれが一生懸命でお稽古を見ているみたいだったけれど、とにかく持ち味が役にぴったり。

 

特に巳之助の和尚吉三に貫禄があって意外だった。

熱くなっている二人の間に入ってきちんと押さえになっている。

仕草もよかったのだろうけれど、目の鋭さと落ち着きが効果的。

 

松緑(しょうろく)が初役で和尚を勤めた時、鬘(出島という名称らしい)が似合わなくて、

縞リスみたいだったのを思えば、あの妙な頭が似合うだけでも大したものだ。

 

*通し

長い戯曲の一部だけを上演するのではなく、ほぼ全てを上演することを通しという。

現代の上演時間では通しといっても、4時間程に収まるようにあちこちカットするのがあたりまえではある。

 

「土蜘(つちぐも)」

松緑と猿之助の顔合わせという珍しい一幕。

けれど、逆の役でみたかった。

 

叡山の僧智籌(そう・ちちゅう)実は土蜘の精の松緑は花道を出てくるところで上体がかすかに揺れるし、退場する時に*伏せる瞬時の動きが鈍く今一つ。

ただ、暗い雰囲気と、正体を現したときの顔の立派さはよかった。

息子の左近(さこん/今年15歳)が 碓井貞光(うすい・さだみつ)に出ているが小さな顔が若い時の松緑と同じ。

年と共にここまで大きな顔になるものなのだなあ。

 

*伏せる瞬時の動き

花道で、僧智籌が正体がばれたかと姿を隠そうとして袖で顔を覆ってしゃがみ込む。素早い動きで怪しさを醸し出すのが眼目。