2月19日水曜日 11:40
シネ・リーブル池袋
去年ロンドン旅行をした時、評判になっていた舞台。なるほど、納得のおもしろさ。
「売り家と唐様で書く三代目」までのリーマン一族150年の興亡を描く大河ドラマ。
それをたった三人の俳優のみで描き切る。時代が推移しても衣装は変わらず1800年代のスーツとコートを身に着けたまま、わずかにサングラスを使うくらいで演じ分ける。
例えば、三代目ボビー・リーマンを演じた時のアダム・ゴドリーは、顎を上げ、サングラスを気障な仕草で掛け、すっとした立ち姿で登場。
また、結婚相手の若い女性を演じた時のサイモン・ラッセルは手首を直角に上げた瞬間に女性になった。
舞台なら、体形、年齢、性別など演技力で作り出してみせるという見本のような見事な演技。
商売で成功するのと相反し、ユダヤ教信者としての宗教行事が軽んじられていくことが、喪に服す時間で端的に表されている。
最初に三兄弟の長男が亡くなった時、残りの兄弟二人はユダヤ教の教えの通り一週間の喪に服す。三男の時は三日、次男の時は三分。
リーマン・ショックで崩壊することは知れているので、三代の当主がそれぞれ悪夢にうなされるシーンは的中する予言になっていて怖い。
ずっと踊り続けて、死んだことすら忘れているというエンディングも栄華と虚しさが満ち満ちていた。
エス・デヴリンの装置もよかった。
直方体の透明な箱の中で三人は演じ、その背景にモノクロの映像が流れることで、場面の転換が行われている。
三人の顕密な仲が箱に閉じ込められていることでイメージできるところから始まり、時が流れるにつれ、視界が狭くなり閉じ込められているような感じを与えることで箱の装置が生きていると思った。
しかし、この透明な直方体はヨーロッパの芝居で好まれるのかな?
NTL「イェルマ」、2017年来日公演 イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出「オセロ」でも使われていた覚えがある。
日本でもNTLの三人の俳優と同じく五十歳代で、香川照之、佐々木蔵之介、堤真一あたりで上演できそうだ。