6月5日 水曜日

Duke of York’s Theatre

14.30pm

台本は2008年メジャーリーグ発行 笹部博司の演劇コレクション イプセン編03「ロスメルスホルム」で読める。

NHKBS「マスケティアーズ パリの四銃士」でアトスを演じていたTOM BURKE主演。好きだったので、彼が生で見られると思うだけでワクワクした。

 

「ロスメルスホルム」はわかりにくい話しだ。読んで、観ても、最後に二人が入水心中をするという結末には違和感がある。

 

台本にはない演出が加えられている。

幕開きで、レベッカが窓から外を見る。その時に窓を開けようとして手にけがをする。

彼女が罰せられるべきだという、一つの象徴のようだった。

 

また、後半でロスメルが、家の使用人たちを解放すると宣言をして、ばらまくように花を手渡す場面があった。

 

なので、イプセンの台本に独自の改変を施しての上演なのかもしれない。

 

大道具がよかった。

写真の様に居間の壁面に先祖の肖像画が二十枚以上掛かっている。この家が代々続いてきた家柄だと見てわかる。ただ、正面に一枚、黒人の当主の肖像画がある。これが何だかわからなかった。クロル役が黒人のGiles Tereraだったことと関係があるのか?わからない。

 

椅子や机、肖像画すべてに布がかかっていて、使用人の手で順次取り払われて行く所から芝居が始まる。この家が暫く使われていなかったことがわかるのだが、リズミカルな動きでとても魅力的な幕開きだった。

 

レベッカ、クロル、ロスメルの三人が食事をとる時、レベッカだけがぞんざいな祈りをしてとまどうところが、後の三者三様の思想にかかわる仕草になっていた。

 

この食事中の会話で、お客さんが何度も笑ったのだが、後で台本を読み返してもなぜ笑ったのかわからない。

 

最後は、レベッカとロスメルの二人が庭に出て行き、直後にクロルが部屋に戻って二人の姿を探していると、正面の壁の下から突然、一気に水が流れ出て来て、舞台を覆う。

 

これは衝撃的な幕引きだった。心中してしまう意味はわからないが、全てを呑み込ませる勢いがあった。

 

TOM BURKEは貴族然としたたたずまいが素敵だった。

クロル役のGiles Tereraが滑稽なところも真面目に議論を仕掛けるところもセリフの緩急がよかった。

 

劇評などは良いようだが、三階などは三分の一程しか埋まっていない。わかりにくい芝居だという点が集客にも出ているのかもしれない。

 

二階は小さなバルコニーに出られる。小さな劇場なので、それだけでも開放的な印象を受ける。

 

劇場に入る時、プリントアウトした紙を係員に見せたら、そこの階段を上って行けと言われるままに三階に行き、三階の係員に紙を見せたら一階ボックスオフィスでチケットに換えて来いと言われた。

戻って列に並びなおして換えて貰う。これまたロンドンの劇場ではありがちなことなのでしょうね。

 

右隣に座った、一人で見に来ていた青年が大変に礼儀正しく、座席を出る時、私の前を通るだけの会釈でも、きれいに頭を下げていった。顔の印象は薄いが、しぐさが記憶に残る青年だった。