1月3日水曜日 10:30

国立大劇場

 

平河天満宮に参拝。数年前から茅の輪がビニールの笹みたいなもので作られていたり、手水鉢に鳩除けシートがひいてあったりと随分艶消しなのが残念。

 

鏡割りは2階から見物。菊之助は2階の取材カメラに向かっても手を振るなど愛嬌たっぷり。

今年からだと思うが、この鏡割りの様子をロビーの隅に設置したモニターですぐ再生していた。一ヶ月間流すのかな。

 

芝居は先ず、真っ暗になるとチーンという鐘の音が。舞台全面が星空になり流れ星が流れた後に馬のシルエットが浮かぶというオープニング。

とてもきれいだった。

 

全編見終わって、まず最初に思ったことは、先代猿之助が上演した「當世流小栗判官(とうりゅうおぐりはんがん)」の*奈河彰輔脚本が小栗判官の世界のエピソードをきちんと押さえて、面白く上演していたのだなということ。

そのエピソードは、

暴れ馬鬼鹿毛(おにかげ)の碁盤乗りの曲馬、

瀬田の橋蔵の滑稽な芝居、

逃げた船を内臓を放り投げて祈り引き戻す猟師浪七((なみしち)の執念、

青墓(あおばか/地名)での水汲みをする照手姫へのいじめ、

お駒の嫉妬が判官のからだに祟ること、

雪山の盗賊の宿、

などというところ。

 

印象に残った場面は以下の三か所。

 

足利家の重宝〈水清丸(すいせいまる)の剣〉を判官が海底から取ろうとすると、菊五郎の盗賊・風間八郎が妖術で横取りして去っていく。この時、花道を晒を翻す*波子を前後に従え、フラッシュの瞬く中を悠々と退場する。

フラッシュが無くてもよさそうだったが、菊五郎のからだが怪異にみえる。

 

松緑たちの立廻り。

岩山より背中から網の中に落ちるのは、中々スリリング。

松緑の浪七が腹に刀を突き立てた後、血潮の赤い布を自分の手で手繰りだしているのが見えて失笑が沸いたが、初日故仕方がないかな。

 

最後、滝壺に突き落とされた菊之助の判官が蘇生するばかりか、同時に二つの足利家の重宝を手に入れてニョッキリ顔を出す。

こういう大らかな場面に生真面目な菊之助がぴったり。私の横の人がケタケタ声を挙げて笑っていたが、そうさせるおかしみが巧まずして出てくる。

 

 

休憩時間の獅子舞のとき、彦三郎の息子・亀三郎君、寺島しのぶの息子・眞秀君、菊之助の息子・和史君が並んで、ご祝儀を獅子の口に入れて噛んで貰ってうれしそうにしていてかわいかった。私も例年通り噛んで貰えてよかった。

 

*奈河彰輔脚本

猿翁が猿之助時代、歌舞伎に3Sを、つまりストーリー、スピード、スペクタクルを取り込んみ、脚本を松竹の奈河彰輔とともに作成し上演し「猿之助歌舞伎」として何本もヒットさせた。

「當世流小栗判官」では漁師浪七が岩の上で切腹すると、そこから血が帯のように流れ、絶命すると岩肌に逆さに倒れ込むなど、確かに3Sだった。

*波子

黒子(くろご/歌舞伎の舞台で演技の介添えをする役。黒一色の着物・頭巾等で頭から足まで覆う)の水中場面バージョンが波子。黒では目立ってしまうので、青色の頭巾、着物を着る。