1月29日金曜日 19:00
世田谷パブリックシアター

永井愛の戯曲はまじめに史実を舞台化しているようで、ちょっとユーモラスな味わいも加えているので、するすると気持ちよく見ていられる。
チラシでは黒木華が現代の書斎の中でポーズをとっているが、舞台の設定は普通に明治時代。

黒木華の一葉を中心にした人の出入りは史実通り。
一葉が恋心を抱いた半井桃水は、これといってこだわりのない、健康的に生きてける好男子。
平岳大が笑顔を絶やさず、良い声で淡々とせりふを言うと、いかにもそんな感じである。
途中、葉茶屋を経営し始めたと言って前掛けをつけた姿が似合うし、大の字になって、いびきをかきながら寝ている所へ一葉が来るという、2,3回繰り返される同じ設定も桃水の雰囲気を醸し出していておもしろかった。

黒木華の小づくりな顔立ちは、一葉の肖像画に似ている。
桃水に心惹かれながらも、その気持ちを振り切ろうとして、手と頭を互い違いに横に振っている姿が可愛らしい。
実際まだ十九かはたちの娘だったのだものなあと、笑いながらちょっと痛ましい気持ちになる。

貧しさ極まる中、母役の木野花がパワーあふれる母として一番動き回る。
彼女がいなかったら、随分静かな舞台になってしまっていただろう。

休憩を挟んで後半が始まる直前、舞台照明が暗い時には本棚がたくさん並んでいるように見えた大道具が、照明が入ると長屋の桟がはまっている窓になるというのは、この芝居にぴったりでよかった。美術は大田創。
書く女