1月9日土曜日 国立能楽堂 13:00

「麻生(あそう)」
あらすじ/麻生何某(あそうのなにがし) は元旦に出仕するため、下男の藤六(とうろく) と下六(げろく) に裃(かみしも)・烏帽子の用意を命じる。
下六は注文した烏帽子を烏帽子屋に取りに行き、藤六は主人・麻生の髪を烏帽子髪に結い始める。
ところが烏帽子を受け取った下六と迎えに来た藤六は、帰る家の見分けがつかなくなり迷ってしまう。
家々に正月の松飾りが施され外見が同じになってしまったためである。仕方がないので松囃子を謡いながら歩き、主人・麻生が気づいてくれるのを待つことにする。

東次郎の髷姿なぞ、これで最初で最後だろうと思い買ったチケット。
髷を結う所は物珍しさで興味深く見た。
ポニーテール状の髷を棒状に縛って、前に曲げて月代の上にもってくるまでを主従で話しながら見せる。月代部分は東次郎の地の頭で、他の部分は鬘なのだろうな。

後半、自分の家が分からなくなった藤六と下六の二人が松囃子を謡うと、それに連れて麻生何某がからだを揺らして興に乗るところが何ともおおどかでよかった。

「仲光(なかみつ)」
あらすじ/多田満仲(ただのまんじゅう)は我が子美女丸に学問の進み具合を尋ねたが答えがはかばかしくない。
そのことに腹を立て家臣仲光に美女丸を討つ様にと命じる。
素直に討たれようとする美女丸を討ちあぐねている仲光を見て仲光の子・幸寿丸がその身替りになると申し出た。
忠義だと自分を納得させ、我が子を斬った仲光だったが、満仲に感謝されてもむなしさをぬぐいきれず密かに涙をながすのであった。
登場人物が全員 能面を着けない直面(ひためん)で登場する。

かなり無謀な主人、多田満仲の観世銕之丞が、持ち前ののどに引っかかる声を張り上げ迫力があった。
みるからに穏やかそうな大槻文蔵が追いつめられて行く姿も哀惜漂っていた。
直面ならではのよさが二人にあった。

子方の美女丸・長田凛三は坊ちゃん顔、幸寿丸・谷本悠太朗はやんちゃ坊主顔と役柄に合っていて、しかも二人とも謡がしっかりしている良い子方だった。